米国核医学・分子イメージング学会総会(SNMMI2013)の旅行記

2013.07.09

2013年6月8日~12日まで、カナダのバンクーバーで開催された、第60回米国核医学・分子イメージング学会総会(SNMMI)の参加報告を、金沢大学附属病院の若林大志先生にご執筆頂きました!

米国核医学・分子イメージング学会総会(SNMMI2013)の旅行記
金沢大学附属病院 若林大志

はじめに

2013年6月8日から12日まで、カナダのバンクーバーで、第60回米国核医学・分子イメージング学会総会(以下、SNMMI)が開催されました(図1)。バンクーバーと言えば、2010年の第21回冬季オリンピック(バンクーバーオリンピック)の開催が有名なのではないでしょうか。バンクーバーは、カナダのブリテッィシュコロンビア州にある国内第3位の都市圏で、都市部ながら自然に囲まれていることから観光業が発達しており、国際会議や国際競技が数多く開催されています。気候が温暖で海と山に囲まれ、治安もよいことから、日本からの語学留学先として人気があるそうです。実際にバンクーバーを訪れてみると、SNMMI会場の近くには大きなスタンレー公園(東京ドームの約85倍)が広がり、ツーリングや散策をしている姿もみられました。日本から約9時間のフライトの後に昼夜逆転してしまう時差があり、日の出が5時、日の入りが21時という体内時計にはよろしくない環境ではありましたが、梅雨の日本と異なり気温は20度前後、天候にも概ね恵まれ、とても過ごし易い街でした。

〝Image of the year”には223Raを用いたアルファ線治療

SNMMIで最も代表的な画像に授与される〝image of the year”に、今年は、2,000以上の発表の中から、223Raを用いた〝Radium-223 Dichloride Response in Bone Metastases in Breast Cancer Patients”が選ばれました。塩化ラジウムの適応は、症候性の骨転移を有し既知の臓器転移のない去勢抵抗性前立腺癌です。第III相臨床試験で、プラセボ群との比較において、全生存期間が延長され、症候性骨関連事象の初回発現までの期間に延長が認められたことにより、2013年に米国食品医薬品局から、アルファ線を放出する初めての治療用放射性医薬品として承認されました。今年の〝Image of the year”は、その塩化ラジウムを前立腺癌ではなく骨転移ドミナントの乳癌患者に用い、有効性を18F-FDG-PETで評価した画像です(SNMMIのホームページでも閲覧できるので是非参照下さい)。23名の骨転移乳癌患者に2~4回の塩化ラジウム投与を行い、治療効果をFDG-PETで確認した結果、2回の治療後に約3割の標的病変で効果を認め、治療後も約4割で治療効果を認めたということでした。今後も、様々な癌種における骨転移を対象として検討されることが期待されます。
昨年、マイアミで行われた第59回SNMMIの〝image of the year”も、アルファ線核種である213Biを用いた〝Bi-213-DOTATOC for a New Treatment for GEP-NET Tumors Resistant to Standard Therapies”でした。日本では、内用療法はベータ線を用いた治療に限られてしまいますが、この発表は、ベータ線で抵抗を認める腫瘍にアルファ線核種を用いて治療を実施したというものでした。
日本でも、ホルモン抵抗性前立腺癌骨転移患者に対し塩化ラジウムを用いる臨床試験が行われていく予定です。ラジウム塩化物を用いた内用療法が、骨転移で苦しむ患者に対する治療法の選択肢となることに期待します。

図1 会議が行われたバンクーバーコンベンションセンター

続きは「RadFan8月号」(2012年7月末日発売)にてご高覧ください。