6月21日から栃木県宇都宮市で開催された第27回 日本腹部放射線研究会 in 宇都宮の参加レポートを慶応義塾大学病院放射線診断科の松本俊亮先生にご執筆いただきました!
慶応義塾大学病院放射線診断科
松本俊亮
はじめに
今回の第27回日本腹部放射線研究会は栃木県宇都宮市の宇都宮東武ホテルグランテで6月21日~22日の2日間にわたって開催された。
日光には行ったことがあるが、宇都宮市は初めてという人が多いのではないであろうか。宇都宮といえば餃子像があるほど餃子が有名であるが、私は餃子が大好物なので宇都宮餃子を非常に楽しみにしていた。初日の情報交換会では有名店の中からみんみんと味一番という2店が屋台を出しており、宇都宮餃子を堪能することができた。
東京から電車で約2時間という関東の地方都市での開催ではあったが、西日本方面からも多くの先生方が参加されていた。会場からの厳しい質問や、病理コメンテーターの先生方から診断について疑問を呈されるような症例もあるなど、各症例について活発な議論がなされており、全体として盛況であった。
今回は本研究会で多く取り上げられていた疾患や病態についていくつか紹介する。最後に第4回JSAR CTコロノグラフィ・ワークショップにも参加したので併せて紹介したい。
膀胱癌BCG療法後の腎肉芽腫
膀胱癌BCG療法後の合併症としては肉芽腫性膀胱炎や前立腺炎、肺のBCGomaが有名であるが、腎の肉芽腫性病変は非常にまれである。今回の腹部研では当院から発表された2例のほか、2施設から2例ずつ報告されていた。さらにクイズ症例でも1問出題されていた。(これだけ発表があったにも関わらず、既往が伏せられていたこともあり、クイズの正答率は低かった。私も非常に画像は似ていると思ったが、さすがに4度目はないと思い外してしまった)
画像所見としてはCTで腎に造影効果の乏しい腫瘤や腎盂腎炎のような楔状の低吸収域が多発し、比較的増大速度が速いことが特徴といえる。MRI T2WIでは低信号であることが多いようである。DWIの信号は様々であったが、壊死巣の大きさなどに左右されるものと考えられる。当院での症例ではいずれもFDG PETで高集積であった。
膀胱癌は他部位の尿路上皮腫瘍が発生する率が高いが、この病態を知っていればCTガイド下生検などにより、再発性尿路上皮癌と誤診して腎盂尿管全摘が施行されることを防げるという点において重要である。
BCG療法自体は新しいものではないにも関わらず、これだけ腎肉芽腫の報告が相次いだのはCT urographyなどの普及で頻回にCTが施行されるようになったからであろうか。今回だけでも4施設7症例もあり、まとめれば腹部研として論文として報告できるのではないかと思った次第である。
膵腺房細胞癌
(acinar cell carcinoma)
膵腺房細胞癌は当院も含めて4施設から発表があった。
膵腺房細胞癌は腺房系の細胞から分化したと考えられる悪性膵外分泌腫瘍で、好酸性の腺房細胞に類似した細胞で形成され、腺房構造を有する点を病理学的特徴とする。画像としては比較的境界明瞭で外方に突出した形状が特徴で、充実部は均一に造影されることが報告されている。比較的hypervascularな膵腫瘍の鑑別にはあがるが、頻度が低く、非典型例も多いので非機能性内分泌腫瘍やSolid-pseudopapillary tumorなどとの鑑別が困難であるということが個人的な印象である。
今回発表された症例は門脈腫瘍栓を伴うもの、出血性嚢胞を伴うもの、十二指腸の異所性膵から発生したものなどいずれも興味深いものであった。分泌されるリパーゼ、アミラーゼ、エラスターゼなどによる脂肪壊死は、膵腫瘍と併せて膵腺房癌を疑うことができるので、重要であると感じた。
続きは「RadFan9月号」(2013年8月末日発売)にてご高覧ください。