9月22~25日にGeorgia World Congress Centerで開催された第55回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の参加レポートを新潟大学医歯学総合研究科放射線医学分野 青山英史先生にご執筆頂きました!
(日本アキュレイ社のご厚意による写真提供)
新潟大学の川口 弦先生と一緒に(著者左)
青山英史
2013年9月22日~25日まで米国ジョージア州アトランタGeorgia World Congress Centerで開催された第55回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)に参加した(図1)。個人的にアトランタを訪れたのは2004年の第46回大会以来2度目となる。前回大会の時のアトランタはまだ暑く、連日のように晴れた日が続き、まさに夏季オリンピック開催都市であり、また「風と共に去りぬ」の舞台となった南部のイメージであった。同じものを期待して訪れたのだが、滞在期間中の半分以上は雨が降っており夏のイメージからは程遠く、また町の雰囲気も変わっていた。勇気を出して足を踏み入れた少し危ない雰囲気のスタンドバーは埃だらけの看板だけを残して店じまいし、また、カードをスキミングされた中華料理屋は建物ごと跡形もなく消え去っていた。どこか人工的であった噴水のでるオリンピック広場は緑鮮やかな芝生に覆われ、木々はのびのびと生い茂り(図2)、其処に9年の歳月を感じた。
参加者の歩くスタイルも変わった。以前はほぼ全員が黒いASTROバッグに分厚い抄録集を入れ、重そうに肩からぶら下げて持ち歩いており、これがASTRO参加者の正統派スタイルであった。この2年間参加していなかったため当然今年もASTROバッグが配布されると思っていたのだが、今回支給はなく、すっかりあてがはずれてしまった。あのバッグは野暮ったいが便利であった。またプログラムも手のひらサイズのものが希望者のみに配られただけであり、かわりにほとんどの人がiPadを持ち歩いていた。恥ずかしながら私はiPadを持っていないため大変不自由な思いをした。日本に帰ったらすぐiPadを買おう……帰りの飛行機の中でそういう気持ちを強く持ったが、まだ買いに行く時間が取れていない。今は大した必要性を感じないので、しばらくするとあっさり忘れるかもしれない。
Presidential Symposium
過去の同シンポジウムでは臓器を限定せずに良く言えば大きなテーマを、別の言い方をすると抽象的なテーマを題材としたものが多かったと思う。テーマが大きすぎて、散漫にまったシンポジウムも過去にはあったが、今回は前立腺癌にテーマを絞り、低リスクから高リスクまで時間を区切って進行されていた。どちらのスタイルが良いかは個人の好みによるであろうが、教育講演的な今回のスタイルの方が個人的には好きである。来年以降もこのスタイルの継続を望む。
日本からの参加者の増加
日曜日の夜に開かれたJASTRO Night in ASTROに参加した(図3)。会場は町の中心に位置しているSheraton Atlanta Hotelである。ミネソタ大学に留学中の医学物理士の高橋 豊先生からTomotherapyを用いた全骨髄照射に関して30分ほどの講演が行われ、その後隣の部屋で会食が行われた。前回3年前に参加した時にも日本人の多さに驚いたが、今回も100名を超す参加者がいた。私がASTRO演題を出し始めた15年程前、ASTROへの日本人参加者は多く見積もっても20人程度であったことを考えるとこの数字は驚愕に値する。
また、本原稿を執筆するにあたり、抄録集から日本人と思しき名前を数えてみたところ、口演発表8、ポスター討論5、ポスター発表はなんと88演題もあった。これは口演発表の2.2%、ポスター討論の3.5%、ポスター発表の6.0%にあたる(図4)。全体での演題数は101もあり、ASTROが日本の放射線腫瘍医や医学物理士にとってすっかり年中行事の一つとなったようである。来年は西海岸での開催であり、もっと数は増えるのであろうか。
Clinical Trials Session
私の記憶が正しければ、このセッションが始まったのは3年前のサンディエゴ大会からである。多分Plenary Sessionに届かなかった次点の演題の発表の場であろう。今回は11演題が選ばれており、分子標的薬関連、肺定位照射、PET、粒子線など時流に乗った演題が多く含まれていた。日本に関連するものとしては、脳転移の無作為割り付け試験であるJROSG99-1、EORTC22952-26001、MDACC-NCT00460395の患者毎のデータを基にして行ったメタ解析の結果を、Sahgel氏(トロント)が発表したものがある。「50歳未満では定位照射単独治療を受けた患者群の方で生存率が高い傾向にある」という直観的には俄かに理解しがたい結論が導き出された。今後論文化するに当たり、この原因が何であるのかを詳しく検討する予定である。安易に全脳照射が避けられる傾向にある昨今、本研究に関わった一人として責任を感じている。
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