1月24~25日の2日間に北九州国際会議場(福岡県北九州市小倉北区)で開催された、第24回日本心血管画像動態学会の参加レポートを、専門学校日本福祉看護・診療放射線学院の横山博一先生にご執筆頂きました!
「第24回日本心血管画像動態学会」参加レポート
専門学校日本福祉看護・診療放射線学院
横山博一
はじめに
平成26年1月24~25日の2日間、第24回日本心血管画像動態学会は山口大学大学院医学系研究科 放射線医学分野の松永尚文教授の元で、北九州小倉区で開催された(図1)。本学会は例年開催される日本心臓血管放射線研究会(会長 聖マリアンナ医科大学の小林泰之先生)、日本血管内OCT研究会(代表世話人 和歌山医科大学の赤坂隆史先生)も併催され、今回でそれぞれ第78回、第11回を重ねた。冒頭の松永会長による開催挨拶では今回の大会テーマである「Multimodalityを駆使するCardiac Imaging」の意味づけと近年注目されている心血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)にも焦点を当て、カテーテルによる計測についての教育講演と、CTデータによる算出を行っている特別講演、更に合同シンポジウム等について述べた。
会場となった北九州国際会議場は、松永会長も強調していたようにJR小倉駅からペデストリアンデッキ直結で徒歩5分ほどの利便性の良い場所である。会場に近いホテルの窓からは、JR小倉駅と目と鼻の先にある国内・外に有名な「小倉記念病院」の建物が見え、景観的にも北九州を代表する病院の「顔」という印象を受けた。学会プログラムは一般演題から始まり、教育講演、特別講演等がそれぞれ第1、第2会場の場所で、同時進行という形で行われた。
多枝冠動脈疾患に対する治療戦略:心筋血流予備量比と心筋血流シンチグラムの比較検討
一般演題1の「FFR」セッションでは冠動脈疾患の治療方針決定に際し、従来からの負荷心筋血流シンチと心血流予備量比との比較等に関する演題が、7題発表されている。その中で「多枝冠動脈疾患に対する治療戦略:心筋血流予備量比と心筋血流シンチグラムの比較検討」(船橋市立医療センターの福澤先生)という発表では、心筋血流シンチグラム(MPI)は多枝冠動脈疾患例において、Balanced Ischemiaにより診断能低下の原因となり、血行再建適用決定に問題ありという背景から、FFDの有用性とMPIとの比較検討の発表を行っている。42例の冠動脈造影上50%狭窄138病変について62%がMPIとFFRとが虚血領域で一致しているが、MPIで25%の虚血判定が出来ず、FFRに関しては13%で虚血判定がされないという結果を示し、多枝病変の血行再建にはFFRによる生理的虚血判定が必要であると結論づけている。これについては日本心臓核医学学会からの多枝病変に対するMPI診断精度に関する課題の結論を示唆している印象を感じられた。
循環器最新画像のトピックス
第1会場の特別企画講演である小松 誠先生(尼崎中央病院)は、「循環器最新画像のトピックス」と題する講演を行った。小松先生は長年に亘ってCTによる循環器診断及び治療の第一人者であり、今回もCT検査時の造影剤量について、CT Number-controlling Systemという方法などを紹介している。従来慢性腎臓病患者への造影検査では、主治医が期待する造影剤量の著明な低減に関する解決法が少ないという報告をして、自ら心臓CT検査での適切量の推定をテストインジェクション(5mL)法により、システムの構築を作成したという。先生は「染まり」をコントロールすることで「染まる心臓CT」から「染める心臓CT」を強調している。同時に従来の管電圧を下げ、症例によっては造影剤量と被ばく線量の両方を減らす心臓CTが可能となり、プラークのフォローアップに関しても評価が可能であると述べた。またチャンピオンデータではあるが、造影剤量4mLでの心臓CT検査について紹介している。ただこれにはテストインジェクションに5mLを使用しているということなので、厳密な意味での全使用量を表記すべきではないだろうか。
Stress Free Index : iFR
ランチョンセミナーをはさんで午後の教育講演は、田中信大先生(東京医科大学)の「Stress Free Index : iFR」である。背景として最近のアメリカの医療では冠動脈治療の際のステントが、「使いすぎ」と言われているという。FFRは理論的に最大充血下において、冠内圧と冠血流が直線的な関係となることを利用して、Pd / Pa (狭窄遠位部/大動脈圧)を計測し、その比から狭窄遠位の血流低下を推測するというのがこの定義(指標)である。但しこれは最大充血が正確に得られることが必要条件とされている。そのためアデノシン(ATP)の静脈投与はFFRのゴールドスタンダードになっているが、最大充血が得られない場合が時にあるという。更に多枝の冠動脈を測定する場合は、検査時間が延長される等の点が挙げられる。一方これらの問題解決(血管拡張を必要としない)に対し、hyperemia-freeだが、FFRよりはるかに測定が簡単で有力視されているのが今回講演のintantaneous wave free ratio ( iFR )である。この方法はロンドンのインペリアル大学にある国立心臓・肺研究所のJustin E Davies 先生が提唱している方法である。冠動脈内には大動脈から冠動脈を下降する駆出圧波と、左室圧により形成され冠動脈を逆行性に伝わる反射圧が存在し、また拡張中期の時相におけるすべての影響がない時相も存在して、それをwave free periodと定義し、その時相における冠動脈は安定しているので、同時相内での安静時大動脈圧と狭窄遠位部圧の比を計測して狭窄の指標としている。これによりiFR≒FFRとなり虚血の診断能もFFRと同程度であるという報告がされている(TCT2011)。一方FFRの提唱者であるオランダ、カテリナ病院Nico H.J. Pijls先生らのグループはこれについて反論しているが、演者の田中先生からそれぞれの開発者を、物理学者と数学者のバトル?と喩えて説明し、今後の推移などを述べた。現時点ではiFR >0.93は虚血無し、iFR<0.86は虚血あり、その間の0.86~0.93はAdenosine zoneとしてFFRを測定し虚血を判定するというハイブリットアプローチが推奨され、多施設前向き試験が開始されているという。
いずれにしても、近い内に結論が出ると思われる。
続きは「RadFan」3月号(2013年2月末日発売)にてご高覧ください。