2014年6月5~7日の3日間に奈良県で開催された、第43回日本IVR学会総会の参加レポートを、新別府病院放射線科井手里美先生にご執筆頂きました!
第43回日本IVR学会総会:参加印象記
新別府病院放射線科
井手里美
はじめに
2014年6月5~7日になら100年会館/ホテル日航奈良で第43回日本IVR学会総会が開催されました。今回、Case basedディスカッションやライブセッション、プレナリーセッションなど、新しい試みが多く盛り込まれていました。以下学術レポートのため文体が変わる点をご了承ください。
肝細胞癌に対する治療
欧米で普及している血管塞栓用ビーズのうち、PVA(ディーシービーズ、エーザイ株式会社)(DCB)、高吸水性ポリマー(へパスフィア、日本化薬株式会社)(HS)、およびトリスアクリルゼラチン(エンボスフィア、日本化薬株式会社)(ES)が国内で承認され、TACEの新たな治療デバイスとして注目される。シンポジウムでは、大阪大学の大須賀慶悟先生がビーズを用いたTACEについての講演をされた。DCB、HSの2剤は薬剤溶出能を有し(drug-eluting bead=DEB)、血管内で徐々に薬剤を溶出する性質を有する。欧米ではDEBを用いたTACEとconventional TACEを比較して、BCLC-B、Child Bといった肝機能のbaseが比較的悪い症例においてDEB-TACEで奏功率の向上と再発率の低下がみられたとの報告があり、conventional TACEの不応例にも効果が期待されるとのことであった。しかしながらビーズによる合併症として、シャント通過による肺塞栓、動脈の吻合を介した非標的動脈の塞栓による胆嚢炎、膵炎、また肝膿瘍、胆管障害などがあげられていた。実際のビーズ使用の際には、サイズの選択、注入方法、塞栓のエンドポイント、併用薬剤など検証課題が多いと思われるが、適切な使用によるTACEのさらなる発展が望まれるとのことであった。
脳血管内治療
ライブセッションでは、医真会八尾総合病院の高山勝年先生らが、2症例の脳血管内治療を施行された。1例目は内頸動脈狭窄症例に対するCASの症例で、新しい脳保護デバイスであるMOMAを使用し、Flow reversal techniqueで内頸動脈のみにCarotid Wallstentを留置するといった内容であった。plaqueの範囲およびstentの留置部位、使用するstentの種類、protectionの方法など、多角的なdiscussionが行われていた。2例目はICAのwide neckな動脈瘤に対する、stent assistでのcoil embolizationの症例であった。治療戦略をはじめ、瘤内にカテーテルを誘導する方法や使用するcoilなど、白熱したdiscussionが行われ、大変後学のためになるセッションだったと思う。
ポスターセッションでは、大分県立病院の柏木淳之先生が「Spinal ventral epidural arteriovenous fistula(EDAVF)の1例」を報告され、ポスター賞の受賞となった。血管造影では左第3、 4腰動脈から分岐する多数のsomatic branchをfeederとするventral EDAVFを認め、shuntはL4レベルのventral epidural venous plexusの左側上方と正中よりに存在し、left radiculomedullaryからperimedullary veinへと硬膜内に還流するとともに右側のradiculoemissary veinを 介して椎体外に還流し、上行腰静脈を介してIVCと右総腸骨静脈に流入する形態を示していた。治療は経静脈的に3本のcoilと33% NBCA-Lipiodol溶液 0.2mLで塞栓を行われ、塞栓直後の造影でshuntは消失し、症状は徐々に改善したとのことである。脊髄領域の血管奇形病変は形態の把握が難しく、しばしば硬膜外か硬膜の病変か議論されることがあるように思うが、3D-DSA、多断面再構築像など詳細な検討によってshunt部位の特定を行い、治療戦略を立てることが肝要とのことであった。また経静脈的アプローチで解剖学的にカテーテルのサポートが悪い状況でも、サポートカテーテルの使用とコイルおよびNBCAの併用で、安全かつ確実にシャント部位の塞栓が可能となっていた。低侵襲な血管内治療によって良好な結果が得られており、印象に残る報告であった。
続きは「RadFan」8月号(2014年7月末日発売)にてご高覧ください。
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