2014年9月14 〜17日まで、Moscone Center(カリフォルニア州サンフランシスコ)で開催された第56回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)を、京都大学医学部附属病院放射線治療科の中村先生、秋元先生にご執筆頂きました!
第56回米国放射線腫瘍学会で見た次世代放射線治療の最新動向
京都大学医学部附属病院放射線治療科
中村光宏
秋元麻未
国際シンポジウム、口演・ポスター発表
国際シンポジウムセッション(パート1、パート2)では、高精度放射線治療を安全に施行するために必要な知識や技術に関する講演が行われた。パート1は、IMRTやIGRT、さらには画像誘導機能を用いてセットアップ精度が向上したことにより、一回線量の増加を可能としたIGARTに関する講演であった。まず、各疾患部位に対する照射技法の最適化、画像誘導や呼吸性移動対策の要否に関する指針が示された。また、高精度放射線治療を行うためには医療スタッフの訓練の重要性が謳われていた。この他、医学物理士の視点から高精度放射線治療の臨床適用に必要な品質保証・品質管理項目、患者セットアップ、呼吸性移動対策、輪郭描出に関する講演も行われた。パート2はSBRTやSTIに関する講演であった。SBRTやTIは一回線量が高く、小照射野であるため、高精度なビームモデリング、ターゲット決定、線量測定、線量計算、位置照合が要求される。SBRTやSTIは様々な疾患に対して有用な照射技法であるにもかかわらず、米国では7 ~ 8割の施設で、世界的に見ると6割程度の施設でしか実施されていないことが報告されていた。セッション全体を通して、今後、高精度放射線治療を実施予定の施設はもちろん、現在実施中の施設も各項目に関して再確認を促す内容であった。
口演・ポスター発表ではMRIやPETなどの画像診断技術を放射線治療に応用させた研究が報告されていた。現在でも多様な画像診断技術が腫瘍内局在の同定や進行度の決定に利用されているが、本学会では転移や治療後の再発の迅速かつ正確な診断にも応用されていた。例えば、FDG-PETとMRIを重ね合わせた画像を用いた軟組織肉腫の肺転移の診断、放射線治療期間中に撮像した18F-misonidazole-PETを用いた放射線治療効果の判定、FDG-PETと細胞増殖能を評価するFLT-PETや低酸素領域を評価するCu-ATSM-PETとの比較等の研究が報告されていた。また、放射線治療全体が寡分割照射(一回線量を増加させて、照射回数を減らす方向)に移行している傾向が見受けられた。その他、モンテカルロ法による陽子線や炭素線線量分布の推定、体内の金属が周辺組織に与える影響の評価、遠隔で治療計画を行うためのプラットフォーム開発など、研究発表は多岐に渡っていた。
動体追尾照射法の最新事情
近年、放射線治療システムの高度化に伴い、時間因子を考慮した四次元放射線治療が可能になってきた。四次元放射線治療を導入することで正常組織への線量を低減でき、有害事象発生率の低下が期待されている。四次元放射線治療は息止め照射法、呼吸同期照射法、動体追尾照射法に大別される。息止め照射法では息止めによる負担が、呼吸同期照射法では治療時間の延長が強いられる。一方、動体追尾照射法では、腫瘍に限局した照射野が腫瘍の呼吸性移動に応じて自動的に調整される。患者に息止めを要求せず、従来法と同等の治療時間で照射できるため、呼吸性移動を伴う腫瘍に対して最も理想的な照射法とされている。動体追尾照射法の臨床適用はまだ歴史は浅く、今年で10年目を迎えたところである。図1に動体追尾照射法が可能な装置をまとめた。CyberKnifeとVeroが国内で臨床展開されている。特記事項としては、CyberKnifeでは肺がんに対して体内マーカーを用いない照射法が実現されていること、Veroではリアルタイムモニタリング下の動体追尾IMRTが開始されていることが挙げられる。2013年11月よりThe University of Sydney とNorthernSydney Cancer Centerが共同で、前立腺がんに対してLCによる動体追尾照射の臨床試験を開始している。カウチを動かしながら動体追尾を行う方法も開発されているが、現時点では臨床展開されていない。
図1 動体追尾照射法が可能な装置
続きは「RadFan」12月臨時増刊号(2014年12月10日発売)にてご高覧ください。