第1回日本穿刺ドレナージ研究会 参加見聞記
東京女子医科大学画像診断・核医学科
森田 賢
はじめに
2015年5月16日に大阪市で開催された第1回日本穿刺ドレナージ研究会(略してセンドレ)に参加した。第一回ということで、どのような会になるか大きな期待と少しの不安があったが、結論から言うと予想を上回る有意義な会となった。会場は大阪市立西区民センターで、お世辞にもお洒落で綺麗な会場とは言えなかったが、参加費が1,000円であることも含め、低予算の手作り感が滲み出ており味わい深かった。会場の定員は60名程であったが、参加者は80名以上で、隣の会場から一時的に椅子を拝借し、最後は立ち見が出るほどの盛況ぶりであった。会場は狭めで、議論の時間が6分と長くとられていた事もあり、議論はとても活気のあるものとなった。大阪では翌日に大阪都構想に関する住民投票を控えており、まるで公民館に集まって最後の議論を交わす政治結社の様な熱気を帯びていた。
演題について
演題は一般演題が11題(穿刺5題、ドレナージ6題)で、教育講演、ハンズオン、特別講演がそれぞれ1題ずつであった。一般演題の内訳は、生検の技術に関するものが2題、穿刺による合併症に関するものが2題、ドレナージの技術に関するものが4題、その他が3題であった。生検やドレナージは若手IVR医がかなり初期の段階で一人立ち可能な手技の一つで、他の手技に比し比較的単純な側面もある。一方で、一筋縄ではいかずに名人芸を要する場合もあり、これらの二つの側面がある様に感じる。本研究会では、一般演題では新しい技術や名人芸を学び、教育講演や特別講演では基礎的な知識の再確認+αを学ぶというバランスのとれたものであった。名人芸や自慢症例、やってしまった症例等は今回の様な研究会の醍醐味であり、次回以降も大いに期待ができる。しかし、稀な症例の寄せ集めだけではもったいないので、今後の会の方向性として、若手の教育、施設間の手技の統一化、ひいてはガイドライン作成等につながれば素晴らしいと感じた。
個人的な印象
個人的に印象に残った演題をいくつか挙げたい。先ず、記念すべき第1回の第1演題は防衛医科大学校の山本真由先生からで、胆道内に遺残したチューブをCoaxial snare techniqueで回収した2症例の提示であった。胆管内に遺残したチューブ内にPTCD経路でガイドワイヤーを挿入し、そのワイヤーに沿わせてSnare wireを進めてチューブを捕縛する方法である。どの様に回収するか参加者の想像力を掻き立てる症例提示で、スタートに相応しい内容であった。今回は参加者全員の投票により最優秀演題を表彰する制度があり、慶應大学の井上政則先生の術後難治性肝性リンパ漏に対する肝内リンパ管造影とその硬化療法の発表が受賞された。PTCDと類似の方法で肝内リンパ管を造影し、リンパ液の漏れた部分の液貯留部を透視下で穿刺ドレナージし、硬化療法にて良好に治療されていた。肝内リンパ管はPTCD時に偶然造影される事が稀にあるが、意図的に造影するとなると神業に近いであろう。リンパ液の漏出が綺麗に描出されており、インパクトのある発表であった。意図的に造影するこつとしては、グリソン鞘に沿って穿刺して、ガラスシリンジで造影すると良いとの事であった。肝内リンパ管造影に引き続き液状塞栓物質で塞栓するという報告は過去にある様で、NBCAで可能かどうかが議論となった。今回のトピックスとして、骨盤内の膿瘍や腫瘍に対する経会陰的な穿刺に関する発表が2演題あった。倉敷中央病院の石坂幸雄先生はCTと超音波のFusion画像下(Real-time virtual sonography)に、東京慈恵会医科大学附属柏病院の清水勧一朗先生は透視下(Axial puncture approach)にそれぞれ穿刺されていた。骨盤内の病変には経臀筋的なアプローチがしばしばなされるが、梨状筋を通る場合は出血や神経障害(疼痛)のリスクがあるのに対し、経会陰的なルートではその心配がないとの事であった。CT下でもできるとの意見も出たが、透視下の方が簡単との素早い切り返しがあり、会場は大いに盛り上がった。会陰部からチューブが出る事に関しては、患者の苦痛は意外に少ないとの事なので、選択肢の一つに挙げても良いのであろう。
(続きはRadFan2015年7月号にてご覧ください!)