2015年6月6日に東京大学医学部附属病院で開催された第4回血流会の参加見聞記を、日本福祉看護・診療放射線学院の横山博一先生にご執筆頂きました!
第4回「血流会」参加見聞記
日本福祉看護・診療放射線学院
横山博一
はじめに
6月6日(土)に「第4回血流会 当番世話人・瀬尾先生(筑波大学)」が東京・本郷にある東大病院で開催され、参加、発表する機会を得た。開始時間まで少しあったので、「赤門」や大学構内(図1、2)を散策して楽しんだ。久しぶりにみた「赤門」の朱色が目に焼き付き、梅雨入り前の、のんびりとした土曜日の午後という雰囲気が感じられた。あちこちに歴史的な建物のツアー見学とおぼしきグループがいた割には、東京と思えないような静けさの印象である。病院に近づくと、突然屋上からヘリコプターが飛び立ち、周りに騒音が響き亘った。初めて見るドクターヘリはドラマのワンシーンを見ているようであった。
血流会の目的と試み
血流会は既存の研究会である「心筋会」の姉妹会として発足し、その第1回目を平成25年11月2日に北里研究所病院で開催している。開催の趣旨は『循環器画像診断技術に基づき、血流動態を解明し循環器診療へ適用すること』を目的とし、『「血流」をキーワードに基礎学問から臨床応用に至るまで、幅広いテーマを扱い、専門領域間の横断的な交流を持つことを目指す』といった、従来にない斬新な試みの研究会としてスタートし、参加人数も80名を超えたという。更に発起人はただ単に目新しい企画をするということではなく、昨今の循環器画像診断における血流可視化技術の飛躍的な進展を受け、その基礎的な基盤の向上と臨床応用とを目指す上で複数の研究領域をまたぐ学際的な研究を行うきっかけとなる場を何とか作りたいという思いがあったようで、「新たな挑戦がいつの日か画期的な視野を切り拓き、世界をリードする成果となることを期待して努力を蓄積していきたい」と述べている。メール配信の第4回抄録をみると、総演題数8題を午後1時から途中休憩を挟んで午後6時までの予定プログラムである。発表時間15分、質疑応答15分という規定が書いてあるが、実際の発表では各々の演題講演が40分を過ぎていた。また発表形式は初めに背景説明をし、一旦途中で質問を受付け、その後で自分の研究内容について説明を行い、再び質疑応答を行うというスタイルである。
演題:数値流体力学的手法による大動脈弓部血流解析
8演題の内、いくつか演題を紹介したいと思う。京都府立医科大学心臓血管外科の沼田智先生による「演題2数値流体力学的手法による大動脈弓部血流解析」は手術成績が改善している急性A型大動脈解離の緊急手術死亡例は、およそ10%前後に達しているという。一方でこのような重篤な疾患の発症を未然に防ぐような介入が可能であれば、治療成績は飛躍的に改善するはずであると述べる反面、急性大動脈解離の発症を画像診断的に正確に予想することはほぼ不可能であり、予防的に手術を行う事は出来ない状況である中、従来の評価に加え血流解析を行うことで病態の予測診断ができれば、治療成績は飛躍的に改善すると予想して、大動脈弓部手術前症例の術前CT画像を用いて大動脈弓部の血流解析を行った発表である。方法は術前造影CT画像より血管形状を三次元構築し、流体解析を行った。汎用流体解析ソフトを用いて大動脈基部から下行大動脈までの血流をシミュレーションし、心拍出量5L/min、心拍数60回/minと仮定し、末梢血管床からの反射波を加味し生理的な拍動血流を再現し、大動脈内血流の流線、壁ずり応力、血圧分布を評価している。提示された症例について検証を行いその結果、➀弓部内の近位上行大動脈と近位下行大動脈小弯側に渦流が発生することが確認。②壁ずり応力はST junction周囲、および近位下行大動脈で収縮期に局所的に増大する部位を認めた。③症例2について大動脈瘤小彎側に渦流の発生を確認できた。④症例3の大動脈解離の発症した部位には壁ずり応力の上昇等の所見は認められなかった。という発表である。これらから発表者の沼田先生はまとめとして、ずり応力が増強した部位は大動脈解離の好発部位と重なり、大動脈解離への進展の可能性を示唆する所見であったが、急性解離を発症した症例の解析では、解離部位と壁ずり応力の増大は関連しなかったという結論を述べた。
(続きはRadFan8月号にてご覧ください!)