CIRSE 2015報告
~新しい知見に乏しい、けしからん宣伝が多い、でもCIRSEはまだ楽しい~
IVRコンサルタンツ
林 信成
2015年9月26日~30日にリスボンで開催されたCIRSE 2015に参加した。リスボンは3年前にも開催されたばかりだし、関西からの乗り継ぎはあまり良くないし、さほど気乗りはしなかったのだけれど、RSNAにもSIRにも行くのを止めただけに、何とかもう少しと老骨に鞭打って参加した。まあ着いてしまえば時差ボケで辛いものの、一度にわか雨が降っただけで毎日昼間は暑いくらいの晴天である。物価は安いし食べ物も美味しい。これこそ6500人を超える参加者となってしまったCIRSEが、しつこいとわかっていながらリスボンで開催してしまう理由だろう。
今回は目玉となるような大きな進歩はなかったし、全体に新しい知見に乏しく、4日目には参加者もかなり少なくなり、展示場も比較的空いていた。片道24時間近くかけて参加する意味があったのかと少しは思うのだが、それでもまあそれなりに楽しいのがCIRSEの魅力だろう。
今回は残念ながら、興奮して必死にメモをとる機会はあまりなかった。新しい数字はほとんど何も出ない。一方で悲しいことに、展示場でいくつか見られた誇大広告は酷かったように思う。「アメリカか?」としばきたくなる思いを抑えながら我慢して4日間参加した内容を、理解した範囲で報告する。いつもながら間違いなどがあればお知らせくださると幸いです。
末梢動脈
デバイスの進歩が一休みした感があって、特に新しいことはなかったと思う。米国では末梢動脈疾患の医療費が数十兆円にのぼり、癌よりもコストが高いと聞いて驚いた。やはり生活習慣の改善が何よりも安上がりである。薬剤コーテッドバルーンの成績は相変わらず順調だが、その優越性の多くは開存率など代替エンドポイントでのことで、ABIや歩行可能距離、QOLといったアウトカムでの結果は安定せず、必ずしも有意差を示せてはいない。長い閉塞やTASC C/Dで成績が劣るのは仕方ないが、それでもこれらを含めて、腸骨動脈領域ではいまや血管内治療が第一選択肢である。
膝窩部以下でも、死亡率や救肢率は報告に寄ってまちまちながら、決定的な優位性は証明されていない。ただそれは、そもそも患者の生命予後が癌よりも悪いので仕方ないだろう。何が本当に意味のあるエンドポイントなのか、この領域では設定がなかなか難しい。バルーンにしてもステントにしても、だんだん薬剤コーテッドが当たり前のようになってきており、ステントもほとんどが「結べる」柔らかさになっている。いまやコモディティに近くて製品による差が縮んできている印象がある。薬剤コーテッドバルーンは前拡張が基本になっているようだが、コスト面からは1本ですむような製品に変わっていくのではないだろうか。末梢のステントグラフトは、ヘパリンコートされるとともに両端の性状が改善されて成績が向上したようだが、いかんせん高すぎるし、よほど長い閉塞とか特殊用途に限られそうである。開存率は改善しても、再介入率は変わってないのだから。
理論的にはとっても魅力のある生体吸収性ステントは、相変わらずハードエンドポイントでは優位性を示せずに苦戦している。ただ次々と新しい製品が開発中のようなので、また来年以降に期待したい。
「12ヶ月開存率96.1%」と大々的に宣伝しているステント(Eluvia)があったが、残念ながらまだ市販前で、50例あまりでのパイロット試験の成績のようであった。ボストンサイエンティフィック社のHPを見たら、57例が登録されたMajestic試験の一次エンドポイントは9ヶ月後の開存率で、94.4%と開示されていた。9ヶ月後から12ヶ月後で初期開存率が上がっているのが不思議だった。どのような分析を行ったのか、詳細はよくわからない。ただブースで販売員に聞いたところ、「Zilver PTXとガチンコ対決するRCTを企画している」と言ってたのは素晴らしいと思う。今や似たような製品が多い中で、その戦う姿勢は褒め称えたい。この製品はポリマーコートなので、それが本当に良いのか悪いのか、薬剤を直接塗布したZilverとの間で決着がつくかどうか、とても興味がある。
Controversy Sessionは、1題目がRenal Denervationであった。これはもう勝負がついたようなものだが、なかなか一部の企業は完全には諦めがつかないようだ。しかしながら、「まだ死なない」とする演者も、シャム手技との比較試験ではなく過去の薬物療法とのランダム化比較試験の報告を「レベル1エビデンスだ」と振りかざしていただけなので、説得力は何もなかった。聴衆の30%以上がシンパシーを示していたのが、逆に驚きであった。
2題目は膝窩動脈への一期的ステント挿入の是非を問うものであった。討論前には80%、討論後でも68%の聴衆がこれを支持していたのにはちょっと違和感がある。「まるでどこかの循環器科医みたい」というのが率直な感想である。
3題目は「ICSSの長期成績を受けて、頸動脈ステントは再び盛んになる」というテーマだった。反対の立場で講演した演者は何とDr.Katzenであった。問題は血管外科医よりもMedicareなどの保険であり、いくら安全性が高くても、「無症候性患者に保険償還がされない限り、先行きは厳しい」というものだった。保険の問題は血管外科医よりも高い壁のようだが、過剰適応で施行する医師は少なくないし、そもそも無症候性患者にステント留置することのベネフィットがきちんと証明されていないのだから、仕方なかろう。
Rösch記念講演
前会長であったDr.Reekersが登壇されたが、予想以上になかなか面白かった。重症下肢虚血は定義上こそ下肢切断のおそれのある虚血性障害だが、現実には介入治療が行われなかった症例でも半分強が最終的に切断されていない。介入治療された症例の成績はだいたい12ヶ月無切断率が70~80%なので、その差である真に介入治療によって切断が回避される群、残る介入しても結局は切断になる群、それぞれ20~30%を特定する試みが重要だとし、主たる動脈の開存性は十分に保たれているのに潰瘍が悪化して切断に至った症例などを供覧しながら、Perfusion Angioという組織灌流を評価する新しい手法について紹介した。トラゾリンという血管拡張剤の投与前後で灌流を評価するとよいことや、Capillary Resistance Indexという指標が役立つことなどが述べられた。これらについては、臨床試験も始まっているようである。
CIRSE Postmarket Partnership
市販後調査にCIRSEが手を貸すという話は、少し興味深かった。毎日配布されるニュースでも、全面広告で大々的に宣伝していた。お金は企業が出すが、データはすべてCIRSEが電子保存し、評価はCIRSEから依頼された第三者機関が行い、その内容や科学性をCIRSEが保証・担保するというシステムである。産学協同の極みみたいな試みだが、ある意味WIN-WINのシステムであるとも言える。ただCIRSEの主任研究者たちも利益相反はいっぱい有しているし、どのようにそれを割り当てていくのか、ちょっと不安な気もする。所詮は基本的にエビデンスレベルの低いレジストリー試験なのだが、それをリアルワールドなのだという形でIVRの有効性を主張したい気持ちはよく伝わってくる。SIR-TEXによるRadioembolizationはすでに100例目が登録されたようだし、イリノテカンを溶出するLifePearlという新しい塞栓剤も、このスキームでレジストリー試験が始まるようだ。
アブレーション
この分野も特に新しいことはなかったように思う。RFAは少しずつマイナーな改良がなされているが、基本的には今までどおりである。アドリアマイシン含有リポソーム製剤であるThermodoxとの併用試験では、ある程度予想されたことだが、有意差は出なかった。演者が「サブ解析では有意差があるようだ」と述べたのには呆れた。PRECISION Vで悪癖がついたのだろうか?統計学に弱い医師たちをたぶらかすのもたいがいにしてほしい。
マイクロウエーブはMedtronicがCovidienを買収したのに伴い、以前にも報告したと思うが、凝固範囲を球形に近づけるThermosphere technologyというのを前面に押し出して宣伝を強化していた。ポテンシャルにはRFAに比べて利点がいくつもあるので、実力より低いマイクロウエーブのシェアが少しは高まるかもしれない。
化学療法にRFAを加えることの有効性を検証したCLOCC試験は、両群とも一次エンドポイントであった30ヶ月生存率を大きく超え、さらなる長期成績が必要な状態のままである。無進行生存率では優位だが、これはあくまでも二次エンドポイントである。化学療法の進歩と闘うのは依然として難しい。
アブレーションと外科手術との比較も、今まで何度か書いたとおりである。同等だとほぼ証明されているが、現実には場所その他で影響されているだろうし、臨床の現場では術者の技量で選択がなされているのだと思う。
マイクロウエーブと凍結療法とRFAの有効性の差は証明されていないが、いずれも有効性がかなり高いので、その差をランダム化比較試験で証明するのは困難である(膨大な症例数を必要とする)。
IREは生き残れるかどうかが風前の灯火だが、放射線照射とのランダム化比較試験が始まったようである。個人的にはかなり厳しいだろうと予想している。
Cancer Immunotherapy Systemという名前で、免疫機構が活動する様子を描いた鮮やかなアニメ動画を使って宣伝しているデバイスもあったが、話を聞いたらただの比較的低温のレーザー治療というだけだった。やれやれという気持ちである。
肝細胞癌
昨年のGESTや今年のIVR学会総会が充実していたので、この分野も特に新しいことはなかった。中間型から進行型の治療でTACEに抗癌剤を併用する試験は、相変わらず全敗が続いている。香港から提唱されているHKLCという分類は、BCLC Stage Cの局所進行型の中から治療価値のある症例を選び出すのに役立つ可能性が示唆されている。日本のTAE研究会でも同じ目的の作業を続けているが、いずれにせよ、これら進行例は結局は個別的に考えざるを得ない症例が多い現況が続きそうである。
従来型TACEとDEB-TACEのどちらがよいかと言う点では、まだ混乱が多い。PRECISION Italyの結果で生存期間や奏効率、移植された症例での壊死率などに全く有意差がなかったことが追い風になって、「PRECISION VはDCビーズの優越性を否定した結果であった」ことが正しく再認識されるようになったのは良いことである。まったく別の血管系のセッションで「私たちがビーズを使うのは、効くからではない、副作用が少ないからだ」と明言していたのにはちょっと笑った。対照群の違い(A/Bの頻度)や具体的な治療の実際がまだ十分に標準化されていないので、有効性の評価は依然として難しいだろう。Bland Embolizationより薬剤溶出性ビーズによるTACEの方が有効なことや、コーンビームCTを使うと有効性が高まることなどは、理解が進みつつある。ビーズは小さな腫瘍への根治性が劣ることから、ますますより径の小さなものへと移行しつつあるが、それに伴う合併症も少しずつ増えている(かえって少ないという報告もあるが、技術の違いによるものかもしれない)。小型DCビーズであるM1を用いたTACEの成績がイタリアから報告されていたが、12ヶ月CR率が61%、生存期間中央値が41ヶ月と、まあ普通の悪くない成績であった。対象症例の個数は平均7個で大きさは平均2.1(1~4.5)cmというのがちょっと特殊な感じがしたが、「すべて選択的に塞栓した」と強調していたのは良かったと思う。
DSMであるEmboCeptはけっこう大きなブースを出していたが、特に新しいデータは出ていないようである。欧米でよくあるアドリアマイシン/シスプラチン/マイトマイシンを初回から同時に投与する方法は、ランダム化比較試験でアドリアマシン単独と有意差がなかった。
「早期肝細胞癌の診断」という講演もあった。1cm以下の病変について生検やPETの有用性が紹介されていたが、日本の一般診療からするとかなり違和感がある。病理診断による確診がいまだに重視されているのだろうけど、早期肝細胞癌を針生検だけできちんと診断できる病理医がそんなにいるとは思われないし、肝炎由来の肝硬変がほとんどである日本で1cmなら、CTやMRIで十分だろう。
Dr.Geschwindの講演にしてもDr.Lencioniの講演にしても、最近ますます宮山先生はじめ日本からの成績の引用が増加しているし、JIVROSGが行ったKorea-Japanの前向き試験も、頻繁にスライドに登場するようになった。GESTをはじめてとして関係者の方々が地道に頑張ってきたおかげである。大須賀先生が日本のTACEの歴史をわかりやすく解説されたが、満員の聴衆はとても興味深く聞いていたように思う。なお大須賀先生も紹介されたが、AJRの10月号にはDotter Instituteへ留学中の堀川雅弘先生が、日本におけるいわゆる従来型TACEについて、歴史的背景も含めて総説として書かれている。是非ご一読いただきたい。
肝転移
腫瘍内科医の講演では、最近生存期間が伸びてきていることや、TACEの併用で症状緩和が図られたり化学療法を休める期間ができたりする利点が述べられた。イリノテカン溶出性ビーズを用いたTACEは、小規模ながらランダム化比較試験で化学療法単独に比べての有効性が証明されているはずなのに、なぜか結果は無視され、その後の大規模試験も進んでいない。対照群の成績が悪すぎた(中央値15ヶ月)ことや、他施設からの追試で有効性が再現されないことが原因かもしれない。また会社が「より儲けが大きい」と思われるRadioembolizationに力を注いでいるためや、IVR医もそちらを好んでいることも影響しているだろう。イリノテカン以外に、イダルビシンや分子標的薬などを含有した製剤の開発も少しずつ進んでいるようだが、臨床的成績が出るような段階ではない。
第一選択肢として化学療法にRadioembolizaitonを加えることの有効性について検証したランダム化比較試験は、後述のように有意差がないことが大規模試験にてエビデンスレベル1で証明されたままである。
その他、大腸がんの再発は大半が1年以内に、90%以上が2年以内に生じることから、術後は3ヶ月おきにCTやCEAを検査することを推奨する講演もあったが、そのメリットだって証明されているわけではない(最近、定期的にCT検査を受けた群と受けなかった群で、生存率に有意差を認めなかったという報告があった)。
神経内分泌腫瘍の肝転移に関しては、その種類によって予後がかなり異なること、抗癌剤使用の是非やその種類が標準化されていないことなどが示された。薬剤溶出性ビーズでbilomaの発生率が高いことも強調されたが、これは症例の多くが肝硬変ではないことが原因だろう。
その他、拡大肝切除前の門脈塞栓術についての講演もあったが、使用する塞栓剤の標準化が全くされていないこと、その優劣がよくわからないこと(演者の好みは語られたが、同意できない部分も多かった)が明らかになっただけである。動注化学療法もTACEも、転移性肝腫瘍では生存率への寄与は証明されないままである。
Radioembolization
相変わらず大々的に宣伝しているし、当然腫瘍関連のセッションではDr.Salemはじめ様々な演者(多くは利益相反を有している)が有効性を強調した講演をされたが、残念ながらいまだにレベルの高いエビデンスは出ていない。「Survival benefitは証明されていない」と明言した上で、いつものように従来型TACEとのRetrospectiveな比較検討による有効性を言い張るのみであった。ただ有効な症例があるのは確かだし、有効だった症例では当然ながら生存期間も長い。進行中の試験は今でも多数あり、当たれば儲けものという感じがするほどである。BTGのスポンサードシンポジウムに参加したら、「レベルの高いエビデンスははないけれど、我々は膨大な症例数を経験しており、有効性を確認している」と堂々と言うので、ちょっと呆れた。
レジン製剤とガラス製剤で、報告されている範囲で有効性に差は見られていないようだが、1つの会社は廊下を一面彩って「レベル1エビデンスがあるのは我が社の製品だけ」と大々的に宣伝していた。しかしながらその根拠としていたSIRFLOX試験の詳細を見たら、一次エンドポイントであるPFSは、対照群である薬剤単独と比べて、生存曲線はほぼ重なっており、生存期間はほとんど変わらない(10.2ヶ月 Vs. 10.7ヶ月)。彼らがレベル1で証明されたと強弁していた有効性は、二次エンドポイントである肝臓のPFSだったのである。「肝臓が重要」「肝臓の治療だから」とパンフレットで言い張っているのは、PRECISION Vよりも悪質な誇大広告に感じる。この製品に関しては、スポンサードシンポジウムはもちろん、そうでないセッションでも、演者がいかにも利益相反のかたまりのような語り口であった。参加者の1人が激昂し、「生命予後は変わらない。合併症は多い。肝臓には効くからといって、どうしてこんな治療が正当化されるのか」と食ってかかっていた。気持ちはわかるし、私もその種の発言をしようと席を立ちかけていた。
特定の区域や片葉に徹底して注入するRadiation SegmentectomyやLobectomyについて、また拡大切除の術前処置としての塞栓についても、それぞれ紹介があったが、相変わらず代表的な症例が呈示されるにとどまっていた。移植の前処置としての有用性についても、従来型TACEに比べてQOLに優れていると述べられるのみであった。
塞栓剤
Special Sessionは、一般的・教育的なものだった。コイルやビーズ、EVALやNBCAなど液体塞栓剤について、その基本やピットフォール、合併症などがわかりやすく解説された。造影剤を含有させて可視化したビーズや新たな抗癌剤(スーテントやイダルビシンなど)を含有させたビーズについても、紹介はされたが、臨床的な展開はまだほとんど何もなかった。NBCAでは荒井先生が、「くれぐれも慎重に注意したうえで」と断りながら、マイクロカテーテルを再使用するコツについて動画も含めて紹介された。多少のリスクはあるが、コスト削減には役に立つだろう。
LifePearlという新しいビーズ塞栓剤がテルモ社から発売されていた。以前にも報告したが、塞栓用コイルであるAZURのHydro部分(ポリエチレングリコール)をビーズにしたもので、ようやく春から市販されている。発表はまだ初期経験の段階だが、手応えはDCビーズと似たようなものらしい。薬剤の含浸も可能で(20%くらい小さくなる)、イリノテカンを溶出する製剤については、前述のようにCIRSEと提携した市販後レジストリー試験が始まる。
その他
減量のための左胃動脈塞栓術は、他との重なりで一部しか聞けなかったが、配布されたCongress Newsに掲載されていた内容を見る限り、潰瘍は生じるし、効果は短期間にとどまるし、おそらくシャム手技と対決して勝てる見込みはないだろう。なお対象患者のBMIは平均43.9(40.2~47.8)であった。もうちょっと別の方法を模索したほうがよいように思う。
SureFireという逆流防止機構付きカテーテルについては既に何度か報告した。動脈内圧に変化が生じることが前々回のSIRでも取り上げられていたが、今回のCIRSEのスポンサードシンポジウムを聴いていると、動脈閉鎖に伴う薬剤腫瘍集積の向上が、繰り返し強調されていた。機序はもちろんB-TACEと同じだろう。超選択的なカテーテル挿入ができない症例にも重宝がられており、これもB-TACEと同じである。たまにスパスムを生じるようで、1人の演者はルチーンでニトログリセリンを動注していた。日本でB-TACEの勢いが急減したのと同様、Surefireもそのうち、かえって良くない症例が目立つ日が来ると思うが、欧米ではそもそも超選択的な塞栓をする症例が少ないし、DEB-TACEはともかくRadioembolizationはもともと進行例が対象だし、問題となる日が来るのはまだ先かもしれない。逆流がないので安心して全量を注入できたという症例提示もあったが、DEB-DOXに加えてアドリアマイシンを本当に100mgも入れていたのにはちょっと驚いた。この塞栓剤は、気管支動脈塞栓や前立腺動脈塞栓、腎臓Angiomyolipomaの塞栓や減量のための左胃動脈塞栓にも使われ始めているようである。
以前から懸案になっていた静脈専用のステントが数社から発売されていた。May-Thurner症候群に特化した近位が斜めのステントもあった。この疾患にステント治療が行われる頻度は日本では少ないが、上大静脈や下大静脈に使えるステントは絶対に必要なので、今後に注目している。
TVA社から経皮的に透析用動静脈シャントを作るデバイス(everlinQ)が展示されていた。腕の動静脈をカテーテルに仕込んだ磁石でくっつけ、両者の間をRFで切開するというものであった。肘のすぐ下で作成されるので、日本の自家動静脈シャントと比べると少し位置が高いが、もともと位置が高い米国では重宝されるかもしれない。
以上、新しい知見には乏しかったものの、南欧の暖かい気候のせいだろうか、「来るんじゃ無かった」感はほとんど無かった。企業の宣伝や医師の片棒担ぎが少し下品さを増した気がするのは残念だが、来年のバルセロナも元気だったらできるだけ頑張ってまた行きたいと思う。