第55回 日本核医学会学術総会の参加印象記

2015.12.08

第55回 日本核医学会学術総会の報告を渡辺 悟先生(金沢大学附属病院核医学診療科)にご執筆いただきました。
 
 2015(平成27)年11月の3日間、日本核医学会学術総会が東京の新宿で開催された(図1~4)。会長の小泉 潔先生(東京医科大学八王子医療センター)が部活と医局の先輩のため、以前から総会の準備状況をよく耳にしており、参加する事を大変楽しみにしていた
 今回、一般演題の数が362(口頭274、ポスター88)、海外招待講演の数が6、その他にも様々な企画が満載だった。参加印象記執筆の命をいただいたので、報告させていただく。
 
オリンピック・パラリンピック
 今年は第55回という縁起のよい節目(Go Go)である。「東京、5」と言えば東京5輪を思い浮かべる方もいるだろう。奇しくも、今年の合同特別講演は「2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて」という演題で、招致・運営関係者による講演であった。日本をPRする事が招致活動において重要であった。同じく、日本核医学会も2022年世界核医学会の誘致活動(代表:絹谷清剛先生・金沢大学)を行っており、参考になった。私は情報交換会に参加出来なかったが、噂では本場の人達によるサンバが披露されたそうである。本場の衣装と踊りの迫力で、見ていて胸がドキドキしたとの話である。2016年、リオデジャネイロが今から楽しみである。
 
甲状腺癌
 2015年10月にアメリカ甲状腺学会が甲状腫瘍に関する改訂ガイドラインを発表したばかりでタイムリーであった。411ページという膨大な内容の重要点が阿部光一郎先生(東京女子医科大学)などによって分かりやすく解説された。超音波検査では病変の大きさが明記され、FNAの推奨基準がより明瞭になった。病変が1cm未満であれば葉切も検討すべきとされ、日本の考えに近づいた。リスク因子ではリンパ節要因、濾胞癌成分、BRAF変異などが改訂された。投与量は150mCiまでが好ましいとされ、特に70歳以上では注意すべきである。また、治療反応の分類が新たに設定された。
 ガイドライン以外にも様々な解説や発表があった。東 達也先生(滋賀県立成人病センター研究所)が198例の解析結果を2011年のJNMで行った報告では、甲状腺全摘から最初の内用療法までに半年以上経つと死亡率は4.2倍に増加し、重要なリスク因子であった。甲状腺癌の罹患率・死亡率は日本、そして世界で増えており、内用療法の件数も増えている。しかし同療法の治療ベッドは年々減少しており、順番待ちの状態である。ベッドのない県も6つある。福島県立医科大学に震災復興予算で治療環境が整備される事は明るいニュースである。
 2012年にNEJMに掲載された2つの論文からは、遠隔転移がなければrhTSH併用30mCi内用療法が推奨される。休薬した場合や100mCiを投与した場合と比べて効果に有意差はなく、むしろ副作用や被ばくの観点から優れている。日本は欧米に比べてrhTSHで10年遅れているとも言われ、世界の動向に要注意である。
内用療法抵抗性の甲状腺癌にソラフェニブ、レンバチニブで有意差が出ており、バンデタニブも第3相試験でPFSで有意差が出ている。今後もどんどん新薬が出てくる。しかし、月70万円を継続的に支払っていくのは大きな問題である。手足症候群や小脳出血の副作用報告例もある。

図1-003

図1 新宿の高層ビル群
図2-003
図2 都庁隣りの会場ホテル
図3

図3 ホテルの豪華なエントランス
図4
図4 開会式恒例の銅鑼

 
(続きはRadFan1月号にてご覧ください!)