第58回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の参加レポートを河野佐和先生(東京女子医科大学放射線腫瘍科)にご寄稿頂きました!
はじめに
2016年9月25~28日まで、マサチューセッツ州ボストンのBoston Convention Centerで開催された第58回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の学術大会に参加した(図1)。ここ10年では2004、2008年に続いて3回目の開催であった。ASTRO常連者の間ではお馴染みの地だが、私個人としては、昨年のサンアントニオへ教授に同行させていただいたのがASTRO初参加であり、今年は諸先生方にご指導いただいたお陰で念願叶い、ポスターを携えて初めてボストンを訪れることができた。今回は、昨年の参加時より少しでもこのASTROの空気に馴染みたいと思う心とは裏腹に、ネイティブスピーカーの英語のスピードはまたしても速く感じられる場面ばかりで、スライドなしでは理解に難いことが多かったが、初心者の観点から、今回のASTROがどんなものであったかご報告させていただき、これから初めて参加される方々の参考になれば幸いである。
Enhancing Value,Improving Outcomes
ASTRO Annual Meetingは南アフリカ以外の世界各地から、参加者は1万人以上、企業展示も200を超える世界最大規模の学術大会である。今回のASTROについては、我々が同じアジア人に注目しがちということを除いても、中国系アメリカ人のみならず、中国本土からの参加が非常に多い印象であった。実際に、2,900題の応募演題のうち、アメリカの1,725題に次いだのが中国の285題、採択された数も2番目に多いとのことであり、臨床試験のセッションを一つ持っているほどであったし、会場では食道癌や頭頸部癌のセッションは演者も座長もほとんどを中国人が占めていた。昨年もこれらのセッションでは中国系アメリカ人が多かったが、今年は中国本土からの参加者も多く、皆英語が流暢であった。なお、日本からの応募は178題、中国に次ぐ3番目で、同じアジアの国の活躍は喜ばしいことだが、あまりに目立つ勢いに日本人も負けてはいられないと思った。
今年度のAnnual Meetingのテーマは“Enhancing Value,Improving Outcomes”であった。初日に行われた前立腺癌の治療におけるValueについてのPresidential Symposium にはじまり、今回のPresidentであるBeyer氏は、医療者の示すValueに対して答えを出すのは患者である、と強調していた。Keynote address(図2)では患者にとっての治療のValueを様々な方向から考えるため、かつての米国保健福祉官(政治家)、医師、航空会社の管理職の3名が講演を行った。ひとりはこれまでに何度も大統領選にも名の挙がった人物だそうで、保険制度や医療費など、理解するのが難しい話題が多かったが、11月に大統領選を控え、候補者2名が初めて直接討論するテレビ番組の前日であったこともあり、会場からは候補者たちについての質問が出たことも印象的であった。
これらの講演は最大のホールであるGrand Ballroom で行われた。大スクリーンが3つ並ぶこの会場は、幕間のWelcome to Bostonという文字が表示されているだけでも迫力があり、ASTROの規模の大きさを感じさせ、心が躍った。同じ会場で催されるASTRO会員の表彰や、社会貢献しているがん患者に贈られるSurvivor Circle Awardを行うAwards Ceremonyはアメリカ国歌で開始され、一気に盛大な表彰式の高揚感に包まれる独特の雰囲気があり、学術的ではないが参加をお勧めしたい項目だ。
★続きはRadFan2016年11月臨時増刊号にてご覧ください!