第6回穿刺ドレナージ研究会 参加見聞記

2021.07.28

はじめに
2021年7月3日に、大阪市で開催された 第6回日本穿刺ドレナージ研究会に参加 した。本研究会の代表世話人であり、筆 者のIVRの師匠でもある、保本 卓先生(都 島放射線科クリニック副院長/IVRセンタ ー長)よりご指名頂き、僭越ながら感想 を述べさせて頂く。
本来は2020年6月に開催予定であったが、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、約1年の延期を経て、現地会場とWeb配信を併用したハ イブリッドでの開催となった。今回の目 玉は、なんと言っても、これからの癌医療を大きく変える可能性のある「光免疫療法」の開発者である、小林久隆先生 (National Institutes of Health(NIH)[アメ リカ国立衛生研究所])による特別講演 「光免疫療法~経皮的穿刺に期待するも の~」である。昨年に既に招聘が予定さ れていたが、一年越しの待ちに待ったご講演であり、本件については後述することとする(図1)。

代表世話人の保本 卓 先生(都島放射線科クリニック)から光免疫療法の開発者である小林 久隆 先生(NIH)に感謝状贈呈☆

現地会場は、第2~4回日本穿刺ドレナ ージ研究会の開催場所と同じく、JR大阪 駅直結の大型複合施設である、グランフ ロント大阪内にあるナレッジキャピタ ル・カンファレンスルームであった。会 場はとても広々としており、現地参加者 の人数も制限されていたことから、程よ いソーシャル・ディスタンシングが可能 となっており、終始活発な議論が繰り広げられた(図2)。なお、前日からの大雨 の影響で東海道新幹線が運休となったた め、急遽Webでの参加・発表に変更を余 儀なくされた方もおられたが、研究会自 体は終始ほぼ滞りなく進められた。また、 今回も会場後方には各メーカーの機器展示ブースが設けられ、数多くのデバイス のハンズオンが可能であった。Web参 加者向けに、米虫 敦先生(関西医科大学 総合医療センター)による機器展示ブー スの撮影動画が解説付きで録画され、ハ ンズオンの時間帯に放映されることで、 Web参加者も現地にいるような臨場感を 味わうことができ、要所要所でハイブリ ッド開催ならではの工夫が施されていた。

プログラム
一般演題は19演題であった。公演時 間は発表が5~6分、討論が4分となって おり、一般的な研究会と比較すると討論 時間が長く設定されている。これは本研 究会の特徴でもあり、例年のようにいく つもの熱い討論が交わされた。一般演題 の他にも、「CVポート留置術」に関する特別企画やランチョンセミナー、「CTガ イド下肺生検後の空気塞栓」に関するラ ウンドテーブルディスカッション、「IVR シミュレータ」に関するスポンサードセ ミナーなどがあり、最後に小林先生をお 招きしての特別講演が設けられ、非常に 盛り沢山の充実した構成となっていた。

一般演題
難渋な症例に対し、見事なテクニック で治療されている報告が相次いだ。その 中でも、ヒアルロン酸に関する2演題が 印象に残った。まったく異なる用途では あったが、1つは野畠浩司先生(厚生連高 岡病院)の「肝細胞癌のRFAにおいて近接 する胆管主幹部をhydrodissectionした 症例の検討」で、やや粘稠なヒアルロン 酸を用いることで、腫瘍と周囲臓器とを上手く分離できたというものであり、野 畠先生の局所治療への情熱を感じられる 圧巻の演題であった。もう1つは岡 祥次 郎先生(神戸市立医療センター中央市民 病院)の「内視鏡用鉗子を用いた経皮的 異物除去の2例」で、頸部筋内に破損・ 迷入した鍼灸針を、ヒアルロン酸を注入 することで鉗子が開くスペースを確保し、針を経皮的に見事に除去していた。ヒアルロン酸といえば美容形成・整形外科のイメージが先行するが、今後IVR領域のトレンドになるのかもしれない。
また、阿保大介先生(北海道大学)によ る、「肝切除術後胆汁瘻に対しSharp recanalization及び rendezvous technique により内外瘻化に成功した一例」では、 穿ドレ医の極意とも言えるスーパーテク ニックの創意工夫により、難渋症例を見 事に治療されており、演題名からは想像 のできない世界観を実感することができ た。豊富な経験に裏打ちされた戦略的か つきめ細かな裏ワザとも言える技術は、 是非次世代に伝承されていくべきである と感じた。本橋健司先生(東京慈恵会医 科大学附属柏病院)による「尿管断裂に 対してランデブーテクニックを用いて内 瘻化を行った1例」では、泌尿器科領域 に対する穿ドレの威力を感じることがで き、損傷された尿管の突破について、会 場では実に活発な議論が繰り広げられ、 清水勧一朗先生率いる柏病院、穿ドレチ ームによる例年の症例報告レベルの高さも相まって、会場は大いに沸いた。ハイブリッドだからこそではあるが、今回は初の海外からのリアルタイム参加 ということで、堀川雅弘先生(Dotter Interventional Institute)から、「AAVを用 いた1型糖尿病の遺伝子治療研究におけるIVR・センドレ技術の役割と創意工夫」として、アメリカ現地時間の深夜1時に IVR界のスターが登場し、モニター越しに会場を沸かせた。サルを用いた基礎的研究ではあったが、穿ドレ技術が遺伝子治 療に関われる日も、そう遠くはないと感 じた。

森田 賢先生(東京女子医科大学病 院)による、「1本で2本法」、ネーミング がいかにも穿ドレらしく、1本の穿刺経 路から片側大腿静脈にシースを2本留置する方法についてわかりやすく発表され た。胆道系や他の領域にも応用ができる この方法は、両側穿刺の煩雑さを一掃で きるシンプルかつ工夫された方法であり、 奇抜な発想力には大変驚かされた。

★続きはRadFan2021年9月号にてご覧ください!