株式会社エルクコーポレーション
営業統括本部 医療情報システム推進部
赤木 信裕
「風光明媚」という言葉を街として表すと、函館という街になるのだろうか。北海道の南端に位置する函館市は、夜景とイカ漁で有名な異国情緒豊かで、周りに海と山を配するとても美しい街である。3D PACS研究会が産声を上げたのは、実はこの地である。第1回開催は2007年1月にさかのぼり国立病院機構函館病院の臨床研究部会議室をお借りして、当時の名称を「Aquarius Users Meeting in Hakodate」として発足した。第1回目のユーザズミーティングでは、院内の画像ネットワークとHIS、RISなどのシステム連携やインターネット回線による画像配信を含む地域医療連携ネットワークをテーマとして、システム構築における工夫や放射線画像撮像方法の臨床研究の成果を報告する会として開催された。当時の関心はインターネット回線を利用し、地域連携や遠隔医療を開始する際に知っておく必要があるネットワーク負荷とセキュリティー確保の方法などが中心となっていた。その後3D PACS研究会として本格的な活動が開始されたのは、2008年からとなる。この研究会の趣旨は、3D画像処理や医療情報システム、画像表示装置全体の知識や技術向上と、医療情報システムを取り扱う診療放射線技師、医用画像情報専門技師、医療情報技師などの育成に大きな役割を果たすことで、また3DワークステーションやPACSなど医療画像システムのメーカやベンダーとの交流や意見交換と相互の技術向上を目的とし、画像ネットワークや医療情報システムの運用をはじめようとする施設の医師や技師にも情報提供して、特に注目を浴びている院内外への画像配信の運用や画像処理解析技術、また3次元画像ネットワークの構築や画像表示システムの維持管理に焦点をあてた講演を行うものとなっている。また今回研究会として初めて挑戦したハンズオンセミナーは、日本放射線技術学会として2007年に名古屋で開催された秋季大会ではじめて企画されたセミナー方法で、講師の指導に従って実際に実機を操作して教育訓練を受ける方法である。画像システムや医療機器などの操作トレーニングでは、学習効果や習得効率の高い講義方法であることが知られている。
今回の3D PACS研究会ハンズオンセミナーin函館は、2012年6月3日に函館五稜郭病院の会議室で開催された。函館ハンズオンセミナーには、2007年に名古屋で協賛したと同じく、テラリコン・インコーポレイテッド、ナナオ、インフォコムが協賛し、それぞれAquarius iNtuition、EIZO RadiForce(2面構成)と、検像システムのiRAD-QAを10台用意して、各々のタイトルで講義した。
□テラリコン・インコーポレイテッド:3D PACSによる大腸解析のHOW TO
□ナナオ:モニタ品質管理の必要性と管理ソフトによる不変性試験の実践
□インフォコム:フィルムレス環境下での検像システムの重要性
講義用にセットアップされた10台のワークステーションを、10名の受講者がそれぞれを独占して午前・午後のセミナーで20名が講義を受けた。通常技術学会などが企画するハンズオンセミナーでは、2名で1台のPCを共有することが多いことに比較して、短時間でより習得効率が上がったと高い評価をいただいた。テラリコンからは、新しく2012年の診療報酬改定で評価されることとなったCTコロノグラフィーデータの3次元解析法と、診断フローとして重要になる診療放射線技師と診断医との作業連携などについて、またナナオからは、医療用モニタの品質管理に関するガイドラインから不変性試験の手順を、さらにインフォコムからは、画像確定保存の肝となる検像システムの役割と操作を中心に講義を行った。またランチタイムには、ランチョンセミナーとしてエーザイが発売するCTコロノグラフィーの撮像時に活躍する炭酸ガス注入機の紹介があった。
今後本研究会では、例年12月開催の大会だけでなく、各地でのこうしたセミナーの開催にも力を入れられるとのことで、ますます全国の診療放射線技師、医用画像情報専門技師、医療情報技師の皆さんと交流を深めて、顔の見える研究会となっていくことを推し進めていかれるとのことである。エルクコーポレーションは、発足当初からこの3D PACS研究会の開催に深く係わっており、今回も事務局代行として参加をさせていただいた。我々キヤノンMJ医療機器事業グループとしても画像医療のビジネスに係わる限り、今後も本研究会をバックアップしていきたいと考える。
最後に本セミナーは、北海道・函館放射線技師会の皆さんの大きなお力をお借りして実現できたこともご紹介しておかなければならない。この場を借りて函館放射線技師会や会場となった函館五稜郭病院の皆様に、感謝の言葉を申し上げたいと思います。またセミナーの趣旨に賛同し、協賛をいただいた多くの企業の皆さんにも、深く感謝を申し上げたいと思います。