株式会社フィリップス・ジャパン
お問合せ先:株式会社フィリップス・ジャパンIGT systemsモダリティスペシャリスト 坂口裕一
はじめに
インターベンショナルカーディオロジーの領域は急速に進化しており、新たなテクノロジーや機器が加わることで手技の複雑さが一層増している。その一方で、医療スタッフには造影剤量や被ばく線量を最小限に抑えながらより高度で安全な医療を提供することが求められている。フィリップスでは循環器領域のケアサイクル全体にわたるソリューションとして、診断から治療結果の確認までをトータル的にサポートするImageguidetherapyPCIsolution(図1)を提案している。その根幹をなすのが、2017年に販売を開始した血管撮影装置の新製品Azurionである(図2)。
図1 循環器領域のケアサイクル全体をサポートするImage Guided Therapy Solution
図2 Azurion 7B12/12の装置外観
アルパインホワイトを基調としたカラーリングでケーブル露出が少ないアーム設計。
Azurionは新世代プラットフォームを採用し、より質の高い医療環境とカテ室のパフォーマンス向上の実現をサポートする。本稿では新世代プラットフォームAzurionにおける3つのコンセプトを紹介する。
Superiorcare:より質の高い医療環境の提供
循環器領域をサポートするPCISuiteから3つのガイダンスツールを以下に紹介する。
1.DynamicCoronaryRoadmap
DynamicCoronaryRoadmapはリアルタイムの動画ロードマップ機能である。透視像毎に最適な血管像が自動で選択・重ね合わせ表示され、ロードマップ像として専用モニタに自動表示される(図3)。術中に造影された画像が角度ごとに自動保存され、同じ角度で透視を行うとロードマップ像が表示されるため、ロードマップのための追加操作は必要ない。デバイスと血管の位置関係を造影せずに確認することができ、造影剤量の低減や手技時間の削減が期待されている。
図3 Dynamic Coronary Roadmapの運用画面 a b c従来のライブ像(a)、リファレンス像(b)、Dynamic Coronary Roadmap像(c)が並行して表示できる。
2.iFRRoadmap
iFRRoadmapはアンギオシステムによるCo-Registrationの技術で、透視上でのプレッシャーワイヤーの位置、iFRの値および血管像を1画面に集約して表示する(図4)。プレッシャーワイヤーをプルバックする際に血管の位置を確認できるだけでなく、計測後にiFRの値、プレッシャーワイヤーと血管の位置を比較しながらレビューすることが可能となる。
図4 iFR Roadmapの表示画面
プレッシャーワイヤーと血管の位置、iFRの値が1画面で表示。
3.StenBoostLive
StenBoostLiveはリアルタイムにデバイスを強調するガイダンスツールである(図5)。複数枚の画像をリアルタイムに加算処理しデバイスの視認性を向上させ、バルーンやステントなどの血管内治療デバイスの位置決め及び拡張時にそれらの位置をリアルタイムに把握することができる。従来は後処理の静止画表示だったが、StenBoostLiveはフットスイッチを踏んでいる間、リアルタイムにデバイスの動きを把握でき、スムーズなデバイス留置をサポートする。
図5 StentBoost Liveの表示画面
リアルタイム表示のため、強調した画像にてデバイスの位置決めが可能。
LabPerformance:ラボパフォーマンスの最適化
Azurionでは新たに開発した運用システム「ConnectOS」の搭載が可能である。「ConnectOS」はカテ室の様々な機器情報をリアルタイムに統合・表示でき、アンギオシステムから操作することが可能となる。例えば、従来IVUSは本体端末で操作していたが、「ConnectOS」を活用することで操作室や検査室のテーブルサイドに設置されたアンギオシステムのマウスからIVUSを操作し任意の画像を観察することが可能となった。操作室もしくは検査室での作業スペース内であらゆる情報が統合され操作できるようになるため、手技中のムダな動線が減らせることが報告されている。加えて、完全マルチタスク処理機能が搭載されている。検査室と操作室の操作が独立しているため、お互いの作業を中断させることなく自分のペースで検査を進めることが可能となる。また、手技の事前準備もワンタッチで行えるため、今まで術者や治療目的ごとに設定していた準備時間を短縮するだけでなく、セットアップ段階でのエラーリスクも低減することが期待されている。
Userexperience:優れたユーザインターフェイス
Azurionは操作用コンソールを一新し、より洗練されたユーザインターフェイスに改良した(図7)。従来から定評のあるワンボタンワンファンクションのシンプルな操作性は残しつつ、ボタンのサイズを大きくしバックライト機能をつけたことで視認性とデザイン性を向上させた。操作レバーの形状も工夫されており、触るだけで直感的に操作できる。タッチスクリーンモジュール(以下、TSM)は従来のような撮影条件やオートポジションの選択のみではなく、この画面上にて臨床画像の閲覧表示が可能となった。メインモニタが見えづらい状況でもTSMで透視画像を確認することが可能だ。さらにTSMでは透視用シャッターやフィルタも指一本での直感的な操作を実現し、保存された画像の表示や再生、リファレンスの作成までも行うことが可能である。緊急時などのスタッフが十分でない場合においても術者のみで完結できる操作環境を提供する。
図7 洗練されたテーブルサイド操作コンソール
タッチスクリーンモジュール(右上)とコントロールモジュール(右下)により直感的な操作を実現。
最後に
フィリップスはテクノロジーの追求だけではなく、医療現場に役立つイノベーションを進めている。日進月歩で進化するデバイスや複雑化する手技に対して最適なソリューションを提供できるような製品開発はもちろんのこと、統合的なイメージガイダンスカンパニーとしてより良い医療環境作りに貢献していきたい。
OnePointComment
Azurionが、発表されてまず驚いたのはカテ室で働く人のためによく考えられて設計されている部分だ。「ConnectOS」と呼ばれる、運用システムによりIVUS操作時には操作室や検査室のテーブルサイドに設置されたマウスからIVUSを自由に操れる。また被曝線量も最低限に抑えつつ、安心な環境下で手技を行えるのもカテ室で働く読者には福音だろう。「iFRRoadmap」も透視上でのプレッシャーワイヤーと血管の位置、iFRの値も1画面で表示され、最適なPCIを行う上で非常にありがたいシステムだ。計測後にもそれらのものを比較しながらレビューできるのも助かる機能といえる。「DynamicCoronaryRoadmap」はEVT施行時と同様に、デバイスと血管の位置関係をテスト造影行わずに確認することでき、PCI施行時の造影剤低減、手技時間短縮が期待される。さらに「StenBoostLive」と呼ばれる、ガイダンスツールも術者には有用な機能で、これは複数枚の画像を加算処理することでデバイスを明瞭に表示するものでステントなどの位置決めをリアルタイムに確認できることより、被曝量低減、正確な手技につながる。昨年、アムステルダムのフィリップス本社を訪れた際に、日本を含めて世界中の病院のシネ装置が改修・新規調整のために工場に集まる様は壮観であった。1977年スイスでグルンチッヒが最初のPTCAを施行した時のシネ装置はフィリップス社であるが、老舗でありながら、イノベーションを続け、必要な企業統合を行い、IGT(ImagingGuidedTherapy)という新たな治療戦略を追求する姿勢は、ヘルスケアーを中心に事業を展開しようとするフィリップス本社の本気度を感じ。カテ室でイノベーションを続ける我々にとって心強いかぎりである。さらなるイノベーションに期待したい。