透析エコーの実践と評価
エコーを用いたシャント管理の手順
日常のVA管理で最も重要な手法は、日本透析医学会から示されている「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」2011年版に明記されているように、推奨度、エビデンスの質が最も高い、「VA機能をモニタリングするプログラムの確立」である。これは言うまでもなく理学所見のことを指す。したがって、VAを管理していく上で、理学所見を得ずに血流の測定や超音波検査に進むことはできないと認識しておくべきである。
VAに関するさまざまな合併症の管理もVA管理に含まれるが、その合併症の中で最も厄介なものが狭窄であり、VAトラブルにおける検査依頼の大半は狭窄に起因する。検査依頼が来た際の管理手順として、まず穿刺位置を確認することが非常に重要である。そして必ず理学所見をとり、VAのどこがどう悪いのか大まかな推測を立て、その後で超音波での評価に進む。超音波検査での定量評価については、FVやRIによる血流機能評価と長軸と短軸を組み合わせた形態評価を行う。
シャント管理の手順③~血流機能評価
理学所見を取って、異常部位を推定した後は、超音波検査で血流機能を数値化する。FV、RIなどのシャント血流機能は基本的に上腕動脈で測定する。上腕動脈で測定する理由は、血管径が太く測定が非常に容易で誤差が少ないこと、末梢に比して石灰化が少ないので評価しやすいこと、VA全体の血流を反映することなどが挙げられる。たとえば吻合動脈で測定しようとすると、血管径が細く計測しにくい、石灰化が強い、乱流が入り込んでいる、手掌動脈弓からの迂回血流が評価されないといった問題が生じる。流出路静脈の場合も、乱流・拡張・蛇行・分岐などにより評価困難で、圧迫の影響も強く受けるため正確な値を出すことが難しい。
一般的な血流機能の測定条件と測定法としてはまず、血流機能の測定にはパルスドプラ法を用いる。測定部位は上腕動脈の正中断面で、超音波の入射角度は60度を超えると過大評価することがわかっているため、60度以内の角度にすることが大事である。サンプリングボリュームは血管径最大値の3分の2以上で、血管径計測部位は正確に血管壁近位側の内膜間距離を取る。血流波形は1番上でも、1番下でもなく、平均値を取るのが一般的である。血流機能の評価については、透析中でも実施することが可能であり、透析開始後に異常を認めた場合でも超音波を用いて評価できることを念頭に入れておくとよいだろう。
■東芝Xario200を用いたVAエコーの実践
(装置とモデルを用いたデモンストレーション)
まず、血流機能評価を行うときは、できるだけ上腕部の上側にエコーの画像を合わせる。動脈かどうかを判別するポイントは、静脈の場合は圧迫すると凹むことである。動脈の場合はなかなか押し潰されないため、押すという動作で動脈か静脈かを判別することができる。そして上腕部でしっかりと血管の中央断面を描出する。この状態が整ったら、血流の波形を取るためにパルスドプラのボタンを押すと、動脈の波形が出てくる。この波形を見て、閉塞しているかどうか、大体の判別が可能である。
ここでドプラの入射角度が表示されるが、Xario200のプローブでは入射角度を非常に小さく設定することが可能である。この状態でサンプリングボリュームの幅を3分の2以上確保し、血流波形を安定した状態でフリーズして見る。そしてこの状態で血流波形と血管径を測定する。ワンクリックで画面上にはFlow VolumeとRI値が表示される(図7)。
形態評価の実践
形態評価として動脈を追う場合には、解像度が高いプローブを使用することが望ましい。エコーゼリーについては、シャントの形態評価をする場合にはプローブを浮かせて走査することが多いため、硬めのエコーゼリーを使用した方が良い。
静脈を評価する際は、少し押さえただけでも凹んでしまうため、できるだけエコーゼリーをたくさん塗って血管径を測定したほうが良い。狭窄の病変を確認する際は、必ず長軸、短軸2方向から確認し、形状を立体的に把握するべきである。
超音波ガイド下穿刺の実践
超音波ガイド下穿刺のトレーニングをする場合には、細い風船の周囲をゼラチンで固めたファントムを用いると比較的安価で疑似的に穿刺の練習をすることが可能である。穿刺の手順については、まずプローブにドレッシングフィルム剤を貼るが、感染の問題があるため毎回交換すべきである。超音波ガイド下穿刺の場合は滅菌のエコーゼリーを使用し、アルコール綿、ポピドンヨードで消毒をしてからプローブを当てる。
血管を描出して短軸方向と長軸方向を確認した後で、当施設ではまず長軸で中央断面を描出した状態で中心部めがけて角度をつけて穿刺を行う。しっかりと穿刺できているかを短軸で確認し、針先のベベルが2点で見えるのが確認できたら血管を突き抜けないように針先を挿入し、その後外筒を中に入れる。外筒を入れると、輪で見えてくるので、外筒がしっかり入っていることを確認してから針を抜き取る。うまくいかない場合は画像を見ながら微調整してリトライする。 このように、透析室の中に超音波装置を置いてVA管理に活用することで、VA管理の質の向上に貢献できるのではないかと考える。