戸畑共立病院[CT]Case Report
320列面検出器ADCTが患者中心の地域医療のあり方を革新している

Satellite View~Canon Special Session:Innocent Story~ありのままの医療を求めて
2014.02.14

戸畑共立病院[CT]Image Reportはこちらからご覧になれます
Case 1 肋骨骨折の精査
Case 2 小児の肘頭骨折精査
Case 3 急性胆嚢炎 急性胆管炎
Case 4 肝腫瘍
Case 5 直腸腫瘍の疑い
 
 

320列面検出器ADCTが患者中心の地域医療のあり方を革新している。

 

320 列面検出器ADCT は東芝社製のAquilion ONE
2012 年2 月から導入。2013 年度には月平均838 件の検査を実施
最先端画像診断機器の有用性は、毎日の臨床にどのように活かされているのであろうか? 今回は、最新鋭の320 列ADCT(Area Detector CT) 導入のメリットを第一線の声から検証するべく、北九州市戸畑区の地域医療を担う社会医療法人共愛会 戸畑共立病院の画像診断センターを訪ねた。

 

共愛会戸畑共立病院
画像診断センター長
内山大治 医師
“Best Image, Best Diagnosis”という理念

―貴センターの理念からお伺いします。

内山:当然のことですが、良い診断は良い画像からしか生まれません。毎日のBest Image があってこそBest Diagnosisが実現されます。その結果患者さんに有益な医療が提供されるのです。この原点を忘れずに、患者さんひとりひとりと真摯に向き合ってBest Image を得る研讃と努力を重ねる、これが当センターの理念です。

図1 高精度な冠動脈画像が1 心拍で撮れる
バンディングアーチファクトやブラーリングアーチファクトがなく、同時相で心臓全体の鮮明な冠動脈画像が得られる。
図2 ボリュームスキャンによる血管描出能向上
上腕骨粉砕骨折の症例。短時間撮影による最適な造影タイミングでの撮影が可能なため、細かい動脈描出ができ術前評価に有用である。
図3 緊急検査における短時間/ 広範囲撮影
高エネルギー外傷に伴う左大腿部腫大(出血疑い)。160 列ヘリカルスキャンにより、わずか5 秒程度で骨盤から下肢までの広範囲撮影が可能である。
図4 ダイナミックボリュームスキャンによる4D 動態機能診断右側横隔膜麻痺の疑い。動画像観察では左右の横隔膜は呼吸性運動を認め、横隔膜麻痺が否定された。320 列ADCT ならではの診断能力が発揮された。
地域医療への貢献という視座で選んだ320 列ADCT

―さまざまなCT 装置からこの装置を選ばれた理由を教えて下さい。

内山:当院の理念を実現するには、最高の臨床性能を発揮できることに加えて、被ばく低減が考慮されているCT を導入する必要性があると以前から感じていました。学会などでの多くの見聞の末、Aquilion ONE であれば確実に患者さんに多くの診療メリットを提供でき、その結果、地域医療の貢献にも有益であると確信して導入を決めました。
 
動きを止めた高画質と低被ばく撮影が地域医療の進歩に貢献している

―320 列ADCTの有用性を具体的にお聞かせいただけますか。

内山:まず、動きを止めることができない高齢者や子供さん、痛みのため撮影体位が保持できない患者さんでも、鮮明な画質が得られることに驚きました。これまでのCT では、動きの影響による画像のブレやボケのために、こまかい診断が困難になるケースをしばしば経験していましたが、Aquilion ONE の画質はいつでも迷いなく診断することができます。どんな状態の患者さんでも安定した高画質が得られることが、これまでにないメリットです。また被ばく低減技術AIDR 3D によって、被ばくを嫌がる若い患者さんや子供さんでも安心してクオリティの高いCT 検査を受けていただけます。特にリピート検査が多いがん診療や腎機能障害を患った患者さんに対して、低管電圧撮影による被ばく低減とAIDR 3D を活用した造影剤の減量が大きな福音になっています。高い装置性能は、高度な医療行為を等しくすべての患者さんに提供するためにある、日々そのことを実感しています。
 
診療の流れが変わった心臓、血管、整形領域

―日常診療のあり方はどのように変わったのでしょうか?

内山:大きく変わったのは心臓領域です。Aquilion ONE は血管造影検査の代わりに迅速的確な治療方針を与えてくれます。他院に緊急搬送すべきか当院で保存的に経過観察するのか、CT 検査だけでその場で判断できるようになりました。冠動脈CT 検査は1心拍で撮影ができ、特殊な手技を必要とせず気軽に実施できます。成功率も高く、画質も綺麗です(図1)。特に320 列ボリュームスキャンの恩恵を感じるのは整形関節領域です。たとえば、上腕骨近位端骨折で施行される最小侵襲プレート固定法 の合併症として腋窩神経損傷があります。腋窩神経損傷を回避するためには腋窩神経と並走する後上腕回旋動脈の走行を把握し、腋窩神経の走行状態を正確に把握することが必要です。ボリュームスキャンで時間・体軸分解能が向上したことで、神経と併走する細かい動脈の描出が可能になり、骨情報も併せて高分解能で3D 表示できるため術前情報として有用です(図2)。血管系では、160 列ヘリカルスキャンの短時間撮影によって広範囲撮影において造影剤を減量できます。さらに、血管内の造影剤濃度がほぼ均一に描出され静脈の描出もないので3D 画像処理が簡単迅速に行えます(図3)。
 
4D 動態機能検査への活用をめざす

―今後どのような方向性をめざしてゆかれますか?

内山:320 列ADCT ならではの検査として、時間分解能が高い4D 動態検査があります。当院では横隔膜麻痺の評価に有用であった経験をしています。(図4)ダイナミックボリュームスキャンを使った4D 画像は新たなCT 診断の可能性を予感させます。今後さらに様々な応用分野で経験を重ねて、医療レベルの向上に役立てていきたいと考えています。

田中 順平 主任技師
CT 検査が大きくスケールアップ

―320 列ADCT の率直な感想をお聞かせください。

田中:320 列ボリュームスキャンと160 列ヘリカルスキャンでCT 検査が大きくスケールアップしました。320 列ボリュームスキャンは、どうしても動いてしまう患者さんや小児で最速0.35秒で行っています。これまでCT 検査で満足のいく結果が得られなかった場合も通常の検査と同じ結果が得られることに、感銘を受けています。
 

革新的といえる ボリュームスキャン

―ボリュームスキャンのメリットを詳しく教えてください。

田中:上腹部の精査では広範囲を余裕を持ってカバーするために64 列ヘリカル撮影を基本にし、呼吸性アーチファクトが入る場合にボリュームスキャンを追加撮影します。ボリュームスキャンの画像を見ると、患者さんの体内の動きがCT 画像に大きな影響を与えていることがよくわかります。また頭部CTA検査ではボリュームスキャンによるサブトラクション処理で、ミスレジストレーションがなくなり、これまで見ることができなかった穿通枝などの末梢血管を見ることができます。さらにボリュームスキャンは撮影が短時間で済む上に被ばくも低く抑えられるので、患者さんにやさしい検査になっている点も、画期的です。

―なぜボリュームスキャンで画質が向上するのでしょう?

田中:一般にボリュームスキャンは空間分解能、特に体軸分解能の高さが評価されていますが、実は時間分解能が高いことが重要です。患者さんの動きの影響が抑えられ、画像にブレやボケが少ないいわゆるモーションフリーズ効果が得られるのです。
 
患者さんにやさしい 低被ばく撮影

―CT検査の被ばくに関心が高まっていますが、いかがでしょう?

田中:全プロトコールに低被ばく撮影機能AIDR3D を最適化して組み込んでいます。腹部では従来と比較して被ばく線量が約15%低減しています。若い女性や小児など特に被ばくを気にされる方にはさらに線量を落として撮影しますが、画質と線量のバランスを図ることができるので安心して検査が進められます。検査被ばくの観点からも患者さんへの配慮が以前に比べレベルアップしています。

―ボリュームスキャンの被ばくはどうなのですか?

田中:ボリュームスキャンは1 回転で撮影が終わりますから、比較的少ない線量で済みます。低被ばく撮影が求められる場合にも、ボリュームスキャンを積極的に活用しています。

 

山本 晃義 技術科長
新しい価値を産み出すのは探究心

―最先端を使いこなすには、何が重要とお考えでしょうか?

山本:旧いものと新しいものを比べて何がどう違うのか、画像を丹念に見比べて細かい違いを読み取る視線が重要だと思います。違いがわかれば、新しい使い方が見えてきます。「被ばくを低減するにはどうしたらいいか」、「良いタイミングで血管を撮るにはどうしたらいいか」という発展に自然につながっていったのです。
 

―使いこなす知恵は、探究心から生まれるということでしょうか?

山本:その通りです。装置の性能が高いことは重要な要因ですが、技師の技量と画像を見る目が向上すれば、その性能をもっと高いレベルで患者さんのために活かすことができるはずです。

―ありがとうございました。
 
 

戸畑共立病院 外観
社会医療法人共愛会 戸畑共立病院
http://www.kyoaikai.com/kyoritsu/

病床数:218 診療科目:内科、消化器科、呼吸器科、循環器科、外科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、眼科、皮膚科、麻酔科、リハビリテーション科、精神科、放射線科、歯科・歯科口腔外科

救急医療、がんセンター機能、地域医療を柱とする北九州市戸畑地区の中核病院。センター機能による迅速な検査と診断で救急医療に貢献している。がん診療では各診療科と協力した早期診断、術前精査、術後経過観察を実施。地域開業医と検査の予約制を通じて当日の検査と画像のレポート配信や必要に応じた緊急処置を提供するなど、積極的な地域連携を進めている。

●Review from Editor
「最先端の診療を、だれにでも」―
地域医療実現の根幹をなす思想は、装置性能のみに頼っては思うように具現化されない。明確なビジョンのもと真摯に患者と向き合う研鑽努力が噛み合ってはじめて、良質な地域医療が机上から眼前へ具現化されるのではなかろうか。

 
●最高の画像を求めて研鑽する
2012 年度画論The Best Image(東芝主催)CT 部門で見事、第一位の最優秀賞を受賞。同院の理念に基づく高度な撮影手技が高く評価された。