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●戸畑共立病院[MRI]Image Reportはこちらからご覧になれます
Case 1 転移性脳腫瘍
Case 2 多発乳癌
Case 3 肝細胞癌
Case 4 痔瘻
Case 5 手根管症候群
地域医療への貢献という視座で選んだ3テスラMRI
―さまざまなMRI装置からこの装置を選んだ理由を教えて下さい。
内山:当院の理念を実現するためには、最高性能のMRIを導入する必要があると以前から感じていました。多くの見聞を重ねて、Vantage Titan 3Tであれば多くの患者さんに診療のメリットを提供でき地域医療への貢献にも有益だと確信しました。導入後は、患者さんにやさしい高性能が新しい価値を産む、ということを日々実感しています。
特筆すべき体幹部の画質
―これまで3テスラは体幹部の画質が難点と言われてきました。これについてのご感想をお聞かせ下さい。
内山:画質はまったく問題ありません。逆に、導入してまず驚いたのが乳房と腹部消化器領域の画質の高さです。乳房は高い分解能と造影能で乳管内浸潤や多発乳がんの有無が精度よく診断できます。Titan 3Tの独壇場と言ってよいでしょう(図1)。肝腫瘍では濃度ムラのない均一な画像から腫瘍の径、個数、存在部位、脈管浸襲の有無が診断できます(図2)。肝細胞癌肉眼分類による腫瘍形態の評価も加味することで肝細胞癌の生物学的悪性度の推察がMRI で可能となってきます 。また、脂肪や粘液、線維性などの組織性状が明瞭に描出されますので迷いなく読影できるようになりましたね。MRCPも驚くほど綺麗で、術前に必要な胆道の解剖学的評価を可能にしてくれます。肝内胆管の描出が明瞭なので肝内胆管障害の評価や検査方針の判断にも有用です(図3)。Titan3Tは部位を選ばずに高画質が得られるので、ストレスを感じることなく安心して日常診療が行えています。
図1 右乳癌術前(硬癌)
高い分解能と造影能で局所や乳頭下まで進展する乳管内浸潤 (赤矢印)に関する詳細な評価が可能であった。
図2 肝細胞癌(単純結節周囲増殖型)
造影20分後のGd-EOB-DTPA MRIにてCTでは指摘できなかったS1の小さな肝内転移(赤矢印)が確実に診断できる。
図3 左 急性膵炎 右 胆石症術前
胆嚢管と総胆管、肝内胆管の解剖学的位置関係が明瞭に評価できる(赤矢印:副肝管、黄矢印:胆嚢管)
患者利益を高める診断精度の向上
―3テスラMRI は地域医療にどのように貢献しているでしょうか?
内山:なんといっても全身部位でMRI 診断全般の精度が上がったことです。頭部のがん診断ではBrain Metaの検索に非常に有用です。血管からのアーチファクトが少ない高分解能画像で、これまで見逃していたような小さなBrain Metaが確実に診断できるようになりました(図4)。整形領域では肩や肘、膝、末梢の関節で有用です。特に指先の靱帯断裂や手根管症候群はMRIのような低侵襲検査のニーズが高い領域ですから、最初からTitan 3T で診断して治療方針を立てる、というスキームに変わりました(図5)。全ての領域で格段に高い診断精度が得られるようになったことが患者さんの利益に直結する大きな
メリットです。また、高い診断能力を発揮する以前の問題として、すべての患者さんに安心してリラックスして検査をうけていただけることも日常診療では重要です。Titan 3Tのオープンボアと静音性は、すべての患者さんが適切な医療を享受できるという点で、意義深いものがあります。
図4 転移性脳腫瘍
造影検査では血液のT1短縮効果によって生じがちなフローアーチファクトが抑制され微小な病変が確実に描出される。
図5 左 長母指屈筋腱損傷 右 指伸筋腱損傷+中節骨骨挫傷
病変は明瞭に描出され、3テスラMRIの高いSN比を生かした詳細な評価が可能である。
役立つ、使える、非造影MRA
―患者さんにやさしい非造影MRAが注目されています。その印象はいかがですか?
内山:脳血管領域は1.5テスラに比べて末梢動脈まで鮮明に描出され、脳動脈瘤などの異常所見も明瞭に描出されます。いま話題の非造影MRA 技術であるTime- SLIP法を応用したMR portography やFBI法を用いた下肢のMRAngiographyにおいても3テスラの有用性は明らかです(図6)。一般に非造影MRAは、腎機能障害があって造影剤使用が好ましくない場合や高度の石灰化を有する場合に、的確な診断を可能にしてくれます。これらの因子を潜在的に有する腎動脈狭窄症、閉塞性動脈硬化症、肺動脈血栓症、上腸間膜動脈の血栓や閉塞症などに適用が拡がるでしょう。地域の高齢化が進むにつれて、多種多様な血管性病変の診療に、造影剤を使わないやさしい検査へのニーズが高まるのは当然です。躯幹部を含めて高画質を提供できるTitan 3Tが、非造影MRA検査の有用性を拡げてゆくことは間違いないでしょう。
図6 全身部位の非造影MRA
同院は、造影剤を使わないMRAの開発黎明期から、臨床研究や学会論文発表を多数行うなど、本邦では著名な存在である。
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患者利益の享受は 検査環境への配慮なしには語れない
―患者さんにやさしいことが装置の特長とされています。これは臨床の現場でどのような意味を持つのでしょうか?
的場:何度かMRI検査を受けた経験のある患者さんから「いつもより静かでした。これだったら安心して検査を受けられます」と嬉しいお言葉を頂きました。静音機構Pianissimoの有効性を日々実感しています。また当院の従来ボア1.5テスラ装置で検査ができなかった体重100kgを超える患者さんが、オープンボアのTitan 3Tで難なく検査を行なえた経験もあります。どんなに有用な検査であっても、そのメリットを受ける患者さんが限定されてしまっては、意味がありません。すべての患者さんが安心してリラックスして検査を受けていただけることに意義があると思います。
新人技師にも扱える3テスラMRI
―以前には、3テスラは高性能だが何かと扱いにくい、という声が聞かれました。その点はいかがでしょうか?
的場:原理的に3テスラで困難と言われてきた問題がTitan3Tではほぼすべて解決されています。部位や目的で検査依頼を振り分けるといった配慮もしていませんし、扱いにくいと感じることはまったくありません。1.5テスラを扱う延長で扱えています。
―装置の操作性はいかがでしょうか?
的場:操作の自由度が大きくやりがいがある装置です。「このようにしか扱えないので、こういう画像になってしまう」のではなく、自分たちで工夫した画像を作ることができるからです。かといってマニア向けな操作ではありません。新しく開発されたユーザインターフェイスでわかりやすく操作できるので、初めてMRI を経験する新人技師さんでも、問題なくTitan 3Tを扱えています。
病床数:218 診療科目:内科、消化器科、呼吸器科、循環器科、外科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、眼科、皮膚科、麻酔科、リハビリテーション科、精神科、放射線科、歯科・歯科口腔外科
救急医療、がんセンター機能、地域医療を柱とする北九州市戸畑地区の中核病院。センター機能による迅速な検査と診断で救急医療に貢献している。がん診療では各診療科と協力した早期診断、術前精査、術後経過観察を実施。地域開業医と検査の予約制を通じて当日の検査と画像のレポート配信や必要に応じた緊急処置を提供するなど、積極的な地域連携を進めている。
●Review from Editor
「最先端の診療を、だれにでも」―
地域医療実現の根幹をなす思想は、装置性能のみに頼っては思うように具現化されない。明確なビジョンのもと真摯に患者と向き合う研鑽努力が噛み合ってはじめて、良質な地域医療が机上から眼前へ具現化されるのではなかろうか。
(本記事は、RadFan2014年2月号に掲載されたものになります)