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新たな乳癌診療ガイドラインにおいて乳房MRI の有用性が明確に位置付けられた。従来良好な画質を得ることが困難とされていた乳房領域であるが、3テスラの高い画質と優れた診断能力がいかんなく発揮されるようになった。
■50歳代女性
左乳房腫瘤を触知した。マンモグラフィや超音波検査で左乳癌が疑われ、造影MRI施行となった。
■検査目的
乳房腫瘍の鑑別、広がり診断、対側乳房病変の有無を評価する。
■読影医コメント
乳房MRIの役割は、欧米と日本ではさまざまな違いがある。欧米の乳房MRI はハイリスク群に対するスクリーニング検査として適用されている。日本では乳癌の術前検査として重視されるが、たとえば腫瘍の良悪性の鑑別や正確な病変の広がり診断、化学療法の効果判定、マンモグラフィや超音波検査で発見できない病変の有無の評価などに適用されている。3TMRIの高いSN比や造影能を生かしながら、均一に脂肪抑制された画質と、適切なタイミングで撮像された両側乳房ダイナミックMRI によって、手術前に正確な情報を得ることが可能である。その診断的意義は高く、当院における3T乳房MRIは乳癌診断に必要不可欠なものになっている。
■検査担当技師コメント
乳腺の造影MRI 検査では、均一かつ高精度な脂肪抑制効果と高分解能かつ高SN比の撮像が要求される。本3T MRI装置では、Multi-phase TransmissionによってB1ムラの影響による脂肪抑制効果の不良が低減し、優れた脂肪抑制が期待できるようになった。また、脂肪抑制手法「enhanced」によって、乳腺の大きさや形状に依存せずに均一かつ高精度な脂肪抑制が可能になった。この新しい脂肪抑制法による高い脂肪抑制効果と、高分解能で高いSN比の画像が得られる7ch.乳腺専用受信コイルとの相乗効果が、脂肪組織を多く含む乳腺域の診断能向上に大きく貢献している。
術前MRI
左乳房(B領域)に約23×20mm大の辺縁不整、dynamic studyにて不均一な造影効果、rapid-wash outを呈する腫瘍を認める(赤矢印)。右乳房(C領域)に約4.5×3mm大の辺縁明瞭、dynamic studyにて均一な造影効果、rapid- wash outを呈する小結節影を認める(黄矢印)。