戸畑共立病院[MRI]Image Report Case 5 手根管症候群

Satellite View~Canon Special Session:Innocent Story~ありのままの医療を求めて Archives
2014.05.07

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治療に役立つMRI検査をめざして高精細な画質が整形領域の診療の在り方を変える。

整形領域で確実な診断を下すには極限まで高精細な画像が求められる。治療や手術の方針を信頼を持って決定するために、3テスラの高精細画像が果たす役割と期待は大きい。
 
■病 歴:80歳代男性
約1年前より手のしびれと夜間痛を自覚していた。Tinel sign陽性、Phalen test陽性、母指球筋の萎縮を認め、手根管症候群が疑われ、MRI施行となる。
 
■検査目的
正中神経を圧迫する手根管内の病変の有無(腫瘍やガングリオンなど)、正中神経の腫脹や扁平化ならび信号変化の有無、手根管の狭窄の程度を把握する。
 
■読影医コメント
手根管症候群は様々な原因によって生じる正中神経障害の総称である。臨床診断と神経伝導検査で診断し治療法が選択されているが、診断精度向上や局所障害部位の詳細な評価が必要とされている。3T MRIによってこれまで評価困難であった末梢神経障害部位や広がり診断が可能となった。当院では治療方針決定に3T MRIの所見が大きく寄与している。3T MRIは末梢神経障害に対して重要かつ必要不可欠な検査となりうる潜在能力を有している。
 
■検査担当技師コメント
手根管症候群のMRI撮像において最も重要なポイントは、手根管内の正中神経をT2強調像で明瞭に描出することである。手根管の神経が腫大した例ではT2強調像で号上昇を認めることが多く、その信号変化や原因となる病態を的確に描出する必要がある。実際の撮像では、患者さんの痛みや痺れに考慮して可能な限り短い時間で検査を終えるように心掛けている。このため直径7cmの円形受信コイル2つを手関節を挟むように配置し、短時間で高分解能かつ高SN比の画像を得る。脂肪抑制撮像シーケンスにはSPAIR法を用い、プロトン密度強調像およびT2強調像における正中神経の描出能向上に役立てている。
 
 
脂肪抑制プロトン密度強調像
シーケンス名:FSE+10_hiSR
TR/TE:2500/10msec
FA/FL:90/140deg
NEX:2
Slice thickness:3.0mm
FOV:10×10cm
Matrix:160×160
脂肪抑制パルス:SPAIR
撮像時間:2’48”

脂肪抑制プロトン密度像

脂肪抑制T2強調像
シーケンス名:FSE+10_hiSR
TR/TE:3500/40msec
FA/FL:90/140deg
NEX:2
Slice thickness:3.0mm
FOV:10×10cm
Matrix:160×160
脂肪抑制パルス:SPAIR
撮像時間:3’30”

脂肪抑制T2強調像

有鈎骨レベルにて正中神経の扁平化と信号低下を認め、豆状骨レベルと手根管近位側では正中神経の腫大および信号上昇を認める。
手根管内に明らかなガングリオン等の占拠性病変は認めない。