戸畑共立病院[MRI]Image Report Case 3 肝細胞癌

Satellite View~Canon Special Session:Innocent Story~ありのままの医療を求めて Archives
2014.05.07

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3テスラの高画質は、肝腫瘍の性状を明らかにし、治療方針の決定に役立った。

MRI の多彩なコントラスト情報が3テスラでさらに有用性が増している。CT では描出しえない癌組織の性状の詳細が鮮明に描き出され、高精度ダイナミック画像では微小な転移巣を見逃しなく診断できた。
 
■70歳代男性
心窩部痛を認め、腹部CT 及びMRIを施行。肝前区域に約13cm大の巨大肝腫瘍、AFP:34522.05ng/ml、PIVKA-Ⅱ:84300mAU/mlと上昇を認め、肝細胞癌と診断した。
 
■検査目的
MRI で肝内転移の有無や腫瘍肉眼型を含めた精査、治療方針決定を行う。
 
■読影医コメント
肝細胞癌の腫瘍肉眼型は病理学的脈管浸襲や肝内転移と相関を示すことから、治療前の画像で生物学的悪性度を予測することが肝要である。3T MRIは高い分解能と造影能によって、CTで評価困難な肝内転移や内部性状、腫瘍肉眼型の評価が可能となる。他方ADCTは、存在診断や鑑別診断および形態診断以外に、遠隔転移の有無や石灰化の有無、3D CT画像による術前シュミレーションなどの評価に有用である。3T MRIとADCT両者のメリットを組み合わせてより詳細で質の高い診断に結びつけることができた。
 
■検査担当技師コメント
一般的に1.5T MRIに比べて3T MRIでは、B1不均一性の影響によって脂肪抑制が難しいと言われてきた。Multi-phaseTransmissionを搭載した本3T装置では、B1の不均一性問題が解消され良好な脂肪抑制画像が得られる。さらに、腹部ダイナミック撮像時に選択的脂肪励起によるdouble IR脂肪抑制法が利用できるため、常に均一な脂肪抑制効果が得られる。また、横隔膜下や心窩部近傍での磁化率アーチファクトが低減され3Tならではの高いSN比を活かした高画質の腹部画像が可能になっている。
 
EOB Dynamic 肝細胞相
シーケンス名:FFE3D1.3_hiSR
TR/TE:3.7/1.3msec
FA:8deg
SPEEDER Factor:2.2
Slice thickness:4.0mm
脂肪抑制法:enhanced
FOV:30x40cm
Matrix:144×320
撮像時間:0’12”
 
Gd-EOB-DTPA Dynamic MRI 肝細胞相

Axial(投与20分後)

MPR(投与20分後)
Axial(投与20分後)

 
MRI

a|b|c|d|e
a T1WI in phase
b T1WI Out of phase
c T2WI (post EOB)
d 脂肪抑制T2WI (post EOB)
e Gd-EOB-DTPA MRI(20分後)

 


肉眼像
HE染色
久留米大学病院病理部 野村頼子先生、久留米大学病院臨床検査部 中島収先生のご厚意による

 
Dynamic CT
CTでは腫瘍の境界が不明瞭であり肉眼型の評価が困難である。EOB-MRIでは、腫瘍周囲に被膜外浸潤を疑わせる低信号を明瞭に認め(赤矢印)、単純結節周囲増殖型と診断可能で、腫瘍悪性度が高いことが予測される。さらに、MRIは腫瘍内部のモザイク状構造や腫瘍細胞、脂肪成分、出血成分などの内部性状が明確に評価が可能である。3T MRIは、病理所見を反映した特徴的な所見を呈した。
 

a|b|c|d
a 単純
b 早期相
c 門脈-静脈相
d 後期相

 
Dynamic CT

a|b|c|d
a 単純
b 早期相
c 門脈-静脈相
d 後期相

 
Gd-EOB-DTPA Dynamic MRI

a|b|c|d
a 単純
b 早期相
c 後期相
d 20分後

CTではS1の肝内転移は指摘困難である。MRIでは早期相で造影され、平衡相でwash out、肝細胞相で低信号を呈する肝内転移を、見逃しなく診断することができた。