患者にやさしい循環器医療の実践
日時:2013年10月18日
場所:神戸国際展示場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
座長
国家公務員共済組合連合会虎の門病院
山口 徹先生
演者
医療法人社団田貫会高瀬クリニック
大井田史継先生
近年、経皮的冠動脈形成術(PCI)で主体的な役割を果たすX線血管撮影において、患者と術者の被曝の問題に関心が高まっている。本稿は慢性完全閉塞(CTO)を例に、PCIにおける最新の被曝低減技術と今後の被曝マネジメントの展望を紹介する。
[KEY Sentence]
●患者と術者の被曝低減をめざす新たなPCI被曝マネジメントが求められている。
●PCIの線量低減に「透視収集」、「低パルスレート」、「スポット透視」が有用である。
●「Rotation Angio(回転撮影)」は、線量を分散させることで低被曝PCIを実現する。
●入射皮膚線量をリアルタイムに把握できる「Dose Tracking System(DTS)」が登場した。
●DTSは、これからのPCIの被曝マネジメントに必要不可欠な機能になるであろう。
被曝マネジメントの基本:(1)総線量を抑える
PCIにおける被曝マネジメントの基本は、手技全体を通じて総線量を抑えることである。ただし、ただやみくもに低線量化することではなく、必要な情報がしっかり見える画質を確保することが肝要である。画質と線量抑制の両立を実現する技術革新を以下紹介する。
これまでの被曝マネジメントの限界と問題点
さて放射線皮膚障害のリスク管理から考えると、患者の実際の皮膚線量分布をリアルタイムかつ定量性を持って把握することが重要であることは、論を待たない。ところが現状これまでの血管撮影装置が有している線量表示機能は、装置が発生する1分あたりの入射線量率と積算の入射線量のみである。この積算の入射線量は通常あらゆる方向の入射線量を積算したものであり、アームの入射角度を考慮した現実の局所の皮膚面が受ける線量ではない。つまり、術中の患者の皮膚線量をリアルタイムに正しく把握できる術が、実はこれまで全く存在していなかったのである。この問題に気付き、術中の患者の皮膚線量分布を正確に、定量的にモニターできる機能が新たに開発されるべきである、という考えに至った。
まとめ
患者利益のためには、手技を成功させることはもちろん、放射線皮膚障害の合併症リスクを低減させる工夫と努力が必要である。術者自身の利益のためにも、被曝マネジメントへの意識変革が必要である。従来言われる被曝量は装置がX線を発生した総入射線量であり、これは患者や術者のリスク評価の直接の指標にはならない。被曝低減の手技や技術の評価のためにも、術中にリアルタイムで被曝した局所の皮膚線量をその指標とすべきであろう。またPCIでは、術者のみならずセカンドオペレータの役割が重要で、両者の息を合わせれば被曝低減をいっそう高めることができる。その際には、リアルタイムの局所皮膚線量をわかりやすく共有できるDTSのような機能は不可欠である。
DTSを嚆矢とする新たな被曝低減や線量管理の技術を積極的に取り入れ、熟知し、使いこなすことが、これからのPCI術者に課せられた使命であろう。
<文献>
1) Roguin A et al: Brain and neck tumors among physicians performing interventional procedures. Am J Cardiol 111(9): 1368-1372,2013
2) Bednarek DR et al: Verification of the performance accuracy of a real-time skin-dose tracking system for interventional fl uoroscopic procedures. Proc Soc Photo Opt Instrum Eng13; 7961, 2011
(本記事は、RadFan2014年3月号からの転載です)