第15回日本核医学会春季大会ランチョンセミナー
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第89回日本消化器内視鏡学会総会 ランチョンセミナー
日時:2015年5月31日
場所:名古屋国際会議場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
司会
手稲渓仁会病院消化器病センター
真口宏介 先生
【KEY Sentence】
・術後胃の処置時間は長く、量的、時間的な観点から被ばく低減を図る必要がある。
・術後の解剖学的構造を十分に把握することがERCP関連手技を行う前提となる。
・術後の形態に応じて適切なスコープおよび処置具を選択することが大切である。
・Ultimax-iの低レートパルス透視で、術者・患者双方の被ばく低減を図ることができる。
・Ultimax-iの操作は簡便で、処置中に容易にフレームレートや放射角の調節が可能である。
術後胃胆管結石に対するERCP関連手技においては、通常の胃に比べて処置時間が長くなる傾向がある。当院ではFPD搭載CアームX線システムUltimax-i(アルティマックス アイ)を用いることで患者・術者双方の被ばく低減を図っている。また、被ばく低減には処置時間の短縮も重要な課題である。本稿では、有乳頭かつ肛門側からの逆行性アプローチになるB-II(Billroth II法)とR-Y(Roux-en-Y法)に対して当院で行っている戦略を述べる。
ロングタイプのシングルバルーン内視鏡
および前方斜視鏡を用いた
R-Y術後胆管結石に対する内視鏡的截石術
当院ではR-Yの場合は、スコープ挿入にはロングタイプのシングルバルーン内視鏡を使用し、乳頭到達後、スコープを可能な限り前方斜視鏡に入れ替えている。また、乳頭到達後になるべく前方斜視鏡に入れ替えることを念頭に置いているため、先端透明フードは使用していない。
スコープの挿入については、食道の吻合部まで挿入したのち、盲端とは逆の孔に進めていく。Y脚の吻合部では、端側吻合の場合、右の上腹部方向につりあがっている腸管が輸入脚となる。一方、側々吻合の場合には、管腔が3方向見え、中央の孔が輸入脚である場合が多い。
ストレッチ可能例であれば、乳頭到達時はB-IIと同様に、J字型もしくはαループ型になる場合が多い(図5)。その後オーバーチューブを留置し、小腸鏡を抜去、患者の口元でオーバーチューブの送気管対側に切れこみを入れて、前方斜視鏡を挿入していく(図6)。この交換が可能となる条件としては、小腸鏡で口からスコープの先端までが100cm以内で到達した場合、またスコープの屈曲が急峻でない場合が挙げられる。屈曲が急峻になった場合、入れ替え時にオーバーチューブのキンクを生じオーバーチューブがはねてしまう場合がある。前方斜視鏡に入れ替える理由としては、前述した通り、胆管挿管性の良さと、多くのERCP関連処置具が使用可能となることが挙げられる。有効長200cmの小腸鏡の場合には、ニードルナイフや多くのバスケット、バルーンカテーテル等が使用不可になる。
スコープ交換時、図6のように比較的緩やかな腸管ループで到達した場合であっても、オーバーチューブにキンクを生じることがある。キンク部を越えるときのポイントは、無理にスコープをプッシュせず、アングル操作を主として挿入していくことである。一方、図7のような形状で乳頭に到達した場合は、入れ替えが困難であり、ロングタイプのバルーン内視鏡単独でその後の処置を施行せざるを得ない。
胆管挿管後の乳頭処置、結石除去に関しては、前方斜視鏡に入れ替え可能な場合には、ほぼB-IIと同様の方法で可能であるが、入れ替え不能で、ロングタイプのバルーン内視鏡単独で行う場合には、どういった処置具が有効長200cm下で使用可能かを、十分に認識しておく必要がある。
ロングタイプのバルーン内視鏡から前方斜視鏡に入れ替える方法について、Digestive Diseases and Sciencesに報告した治療成績2)においては、小腸鏡で乳頭到達後、前方斜視鏡に入れ替えを試みた20例中、19例で入れ替えが可能であった。入れ替え可能例では胆管挿管率94%(18/19)、処置成功率94%(17/18)という結果で、入れ替えが可能であれば、前方斜視鏡は非常に胆管挿管性に優れたスコープであると考える。
術後胃胆管結石に対する直接胆道鏡
直接胆道鏡には、当院では細径直視鏡(GIF-XP260、Olympus)を使用している。
スコープ交換時は、胆管内にガイドワイヤを留置し、前方視野視鏡を抜去後、オーバーチューブを通じてガイドワイヤ下に細径直視鏡を胆管内まで直接挿入する。
図8は正常の胃の症例とB-II、R-Yの症例でのスコープの胆管挿入角を比較したものであるが、B-IIやR-Yの症例での肛門側からのアプローチは、正常の胃の症例に比べ、緩やかな挿入角となり、挿入は比較的容易である。そのためB-II、R-Yは直接胆道鏡の非常に良い適応と考える。
深部胆管への挿入もプッシュ操作にて比較的容易であり、肝内胆管まで観察できる場合が多い(図9)。内視鏡で直視下に残石が確認され、バスケットやバルーンカテーテルによる截石も内視鏡直視下で行う(図10)。ただし、鉗子口径は2mmと細径であるため、使用出来る処置具を十分把握しておく必要がある。
なお、送気にCO2を使用している場合でも空気塞栓を生じる場合があり、送気は少なく抑え、処置時間は短時間に留めるよう十分な注意が必要である。
<文献>
1) Nakahara K et al: Therapeutic endoscopic retrograde cholangiopancreatography using an anterior oblique-viewing endoscope for bile duct stones in patients with prior Billroth II gastrectomy. J Gastroenterol 44:212-217,2009
2) Nakahara K et al:Endoscopic retrograde cholangiography using an anterior oblique-viewing endoscope in patients with altered gastrointestinal anatomy. Dig Dis Sci 60:944-950,2015
(本記事は、RadFan2015年8月号からの転載です)