第51回日本胆道学会学術集会ランチョンセミナー
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第51回日本胆道学会学術集会ランチョンセミナー
日時:2015年9月17日
場所:ホテル東日本宇都宮
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
司会
愛知県がんセンター中央病院
山雄健次先生
演者
手稲渓仁会病院消化器病センター
潟沼朗生先生
【KEY Sentence】
●大視野・高画質で多方向に角度を調整できるCアームX線透視装置は、安全で確実なERCP手技のサポートに役立つ。
●安全なERCPのためには、メタリックステント、バルーン内視鏡、胆道鏡など、新しい処置具の適切な使用法を知り、選択することが重要である。
安全確実な内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)の実施のためには、適切な手技を身につけ、内視鏡や処置具の特長を学び、日々アップデートされる情報を把握し、適切な使用法を選ぶ必要がある。また、X線透視装置はERCP手技においては命綱とも呼べる重要な存在である。近年の論文で多く報告されているテーマを中心に、ERCP関連手技の実際とコツを概説する。
ERCP関連のガイドライン、論文のトレンド
はじめに、2014年の胆道学会から現在までに発表された代表的な論文を見ると、症例報告を除いて57編のERCP関連の英文が公表されている。日本からも英文が4本、和文が12本、いずれも興味深いテーマで掲載されている。
まず、ガイドラインが4件報告されている。内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術(EPLBD)のガイドライン1)によると、国際的なコンセンサスとして
①EPLBDは内視鏡的機械式砕石(EML)の代替治療となる
②EPLBDは最初に選択すべき治療となり得る
③遠位胆管狭窄、胆管非拡張例は試行すべきではない
④バルーン径は胆管径を超えない
⑤拡張時間は30~60秒
といった点を推奨している。しかし、これらのrecommendation levelを見ると、半数以上の項目はエビデンスレベルが低く、十分なエビデンスが揃っているとは言いがたいようである。新しいガイドラインを見る際には、そのエビデンスレベルについても慎重に見た上で検討していく必要があるだろう。
その他のガイドラインとしては、最近、ERCP後膵炎のガイドラインが膵臓学会雑誌に掲載された。ERCP後膵炎の予防について重要な内容が記載されているので、ぜひご一読いただきたい。また、ERCP関連ではないが、超音波内視鏡下EUSBDのガイドライン委員会が発足している。筆者も関わっており、1年後の発表を目指している。ガイドラインは発表後の検証も必要であり、多施設共同研究や学会などで積極的な意見交換を重ねていくことが重要である。
その他の最近の論文の内容を図1に示す。、胆管・胆嚢に関してはStenting関連が多く、次いで胆道鏡関連の論文も散見される。術後再建腸管に対するバルーン内視鏡を用いた治療の論文も最近のトピックスである。膵臓に関してはPEP関連が多く、特にEndoscopyでは6本の論文が掲載されている。それから、最近の特徴として、3Dプリンターを使ったERCPのトレーニングモデルを含めたERCPやEUSの教育についての論文も多い。以上が最近の論文 b Cアームを回転させることにより胆嚢管の分岐部の認識が向上のトレンドと言えるだろう。トレーニングモデルについては著者の作成したモデルについて後述する。
多方向・大視野・高画質を兼ね備えたCアームX線透視装置の有用性
EPCP手技の実際について説明する。当院のERCP関連手技は、東芝メディカルシステムズ社製のFPD搭載CアームX線システムUltimax-i(アルティマックスアイ)を使用している。モニタは4面構成で、過去の撮像画像(X線以外)、撮像したX線画像、リアルタイムのX線透視画像、内視鏡画像の4つの画像を表示している(図2)。
Ultimax-iは回転機能を有し、レバー1つで簡便に右回転・左回転を行い、任意の方向から撮像することができる。内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ(ENGBD)症例を呈示する。視野を傾け胆管や胆嚢管口の分岐を確認することができ、有用である。画像も非常に高画質で、適切な角度と視野の画像を確認することでガイドワイヤー操作が確実となり、安全・確実な手技の助けになる(図3)。
メタリックステントの有用性と再インターベンション時の注意点
胆道ステント留置術における、メタリックステントとプラスティックステントの治療成績の比較については多くの報告がある。胆管閉塞症例におけるメタアナリシス2)によると、肝門部閉塞、遠位胆道閉塞ともに、re-intervention、胆管炎の頻度といったステント閉塞のリスクはいずれもメタリックステント(SEMS)の方が有意に低いという結果であり、悪性胆道狭窄にはSEMSが有用と結論づけられている。
しかし、メタリックステントを留置するとreinterventionが困難になるという点に留意したい。当院で経験した症例(図4)では、SEMSを左肝内胆管と右の前区域枝に留置したところ、その約1週間後、後区域枝に胆管炎を来した。後区域枝にガイドワイヤーを誘導しステントを入れようと試みるもSEMSのメッシュを通過せず、バルーンや胆管拡張用カテーテルで拡張してもドレナージが困難であったため、ステントリトリーバー(SSR)を用いて狭窄部を拡張しようと試みた(図4b)。SSRを回転させると、右の前区域枝に留置したメタリックステントがSSRに巻きつくと同時に抜去された。内視鏡的乳頭切開術(EST)を行い、抜去用鉗子で把持してステントを抜去し(図4c)、最終的には左右両方のメタリックステントともに抜去可能であった。我々も初めてのケースで、非常に難易度の高い手技であった。
ERCPのトレーニング
ERCPを初めとする手技のトレーニングは、日常臨床では手技中に指導医が術者に付き添うスタイルの指導が一般的に行われている。しかし、昨今の医療事情を鑑み、様々なトレーニングモデルが登場している。ウェットモデルは生体ブタやブタ臓器を用いたもの、ドライモデルはメカニカルシミュレーターや、コンピュータシミュレーター、ハムを用いたトレーニングモデルなどがある。
東京医科大学の糸井隆夫先生が作成したESTモデル5)は、生体ブタの胃、または大腸を用い、粘膜下注入剤により粘膜を膨隆させて疑似乳頭を作成するものである。ESTのトレーニングに非常に有用なモデルだが、ガイドワイヤー誘導下の手技ができないのが唯一の欠点であろう。筆者と糸井先生の共同で作成したメカニカルシミュレーター6)は、ERCPトレーナーに生ハムを装着し、ESTを行う、というシンプルなモデルである(図7)。ガイドワイヤーの胆管内への誘導からESTまでを練習することができる。生体のような内視鏡感覚は得られにくいという欠点はあるが、簡便に使用可能であり初心者には練習しやすいモデルではないかと考える。これらのシミュレーターは、当院のハンズオントレーニングをはじめ、様々な学会、地方会のトレーニングコースで提供し、体験して頂いている(図8)。
ERCP手技は難易度が高く、1つのミスが患者に重大な影響を及ぼすこともある。ERCPに携わる全ての術者の手技向上のためにも様々なモデルを作成し、その有効性を検証しながら、最適なトレーニング方法を追求していく必要があるだろう。
おわりに
安全確実なERCP手技を行うためには、4つのポイントがあると考える。
①手技の流れを習熟する
②内視鏡の仕組みを熟知し、正確な操作を行う
③処置具の種類、機能を把握し、適切なデバイスを選択する
④低被ばくかつ高画質なCアームX線透視装置を用いる
これらは、本稿の冒頭で述べたとおり、常にアップデートされるものであるため、最新情報を得るようにし、またその安全性を常に検証していくことが必要である。
(本記事は、RadFan2015年12月号からの転載です)