東芝ユーザーズセミナー
※マークのある画像は、クリックすると画像が拡大されます。
日時:2015年11月5日
場所:ハイアットリージェンシー東京
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
演者
国立循環器病研究センター
脳卒中統合イメージングセンター
中川原譲二 先生
【KEY Sentence】
●画像の良し悪しには、コリメータの性能(特にシステム感度)と画像再構成法の違いが影響する。
●GCA-9300Rは、全体として約3.5倍のシステム感度向上を実現することで、短い収集時間でも高画質画像が得られ、
認知症やてんかん、小児など長時間検査が難しい対象に有用である。
●GCA-9300Rは123I製剤を使った画像において優れた空間分解を実現しており、線状体や大脳皮質の構造の見え方が
大幅に改善した。これにより、画像診断の質の向上にも寄与できることが示唆された。
GCA-9300Rは3つの検出器を搭載しており、3D-OSEMなどの最新の画像処理技術を実装している点が主な特長である。これらはデータ収集時間の短縮や画質向上に寄与し、SPECT検査における患者負担の軽減や検査効率の向上といった効果が見込まれる。我々は、GCA-9300Rの導入にあたって、約2年間にわたりその有用性に関する検討を行った。
1.Ioflupane(123I-FP-CIT)での検討結果
ドーパミントランスポーターイメージングに使用するPET製剤として18F-FP-CITがある。PETでは、線条体は内包前脚により分離されており、脳幹の集積もわかる。対してIoflupaneを用いたSPECTでは、ドット・カンマという評価しかできない。そのため定量的な評価が必要となっているが本質的ではない。たとえば、軽症のパーキンソン病を考えたとき、左から症状が始まれば右の被殻の後ろの神経が脱落し、集積がじわじわと欠けてくる。こういった情報が診断医にとっては重要である。それをみるには相当の分解能が求められるが、応えるために画像の質を上げることができないかという大きなテーマが出てくる。
LEHRコリメータを用いてFBP法で再構成したSPECT画像(図4)に対して、散乱線補正・減弱補正(CTAC)をかけると、画質の向上が見られた。さらに再構成を3D-OSEM法に変えると画質は大幅に向上する。また、同一ボランティアでのコリメータをFANHRに変えて各種補正を加えると図5のよう画質がさらに向上する一方で、定量性としてはほとんど差がなかった。画像診断を考える上では、定量評価だけでなく、画像そのものをしっかり評価することが大変重要である。今回の検討結果から、GCA-9300RのSPECT画像は、左右差の評価、サジタル・コロナル画像を加味した局所の神経細胞脱落などを議論ができるレベルに来ているといえる。さらにフュージョン画像から神経細胞の脱落の程度や発生箇所が分かるようになれば、パーキンソン病の診断等にも非常に有用になると期待される。
2.Iomazenilでの検討結果
Iomazenilは、通常はてんかん診断に用いられているが、高次脳機能傷害の診断にも有用である。神経細胞のマーカーとなるGABA/BZR(ベンゾジアゼピン受容体)の低下部位をBZRに結合するIomazenilを用いて検出することにより、MRIでは異常がない箇所の神経細胞の脱落も診断が可能だ。大脳皮質へのRI集積の分布を観察することによっててんかんの焦点を診断することができるが、てんかん診断のターゲットの多くは側頭葉てんかんとなるため、内側側頭葉のRI集積の分布を正しく捉えることが診断のカギとなる。コリメータがLEHRでは脳の深部に位置する内側側頭葉のRI集積の分布は観察し難いが、FANHRを用いることで深部の情報を明瞭に描出することができている。さらに、散乱線補正、吸収補正、コリメータ開口補正などの各種補正を行うことで内側側頭葉のRI集積がよりしっかりと見えている(図6)。この結果は画期的であり、統計画像解析といった方法もあるが、画像そのものが重要となる。従来の汎用二検出器型SPECT装置では、脳の深部に位置する内側側頭葉の集積は少し低下しているように見えていたが、GCA-9300Rでは、大脳皮質の構造の見え方が大きく改善している。これは我々に与えられた、「大きな贈り物」といっても過言ではない。
終わりに
今回のGCA-9300Rの検討では、用いるトレーサーのエネルギープロファイルに適したコリメータ選択と画像再構成法(3D-OSEM)の改良によって、検査時間の短縮や、空間分解能の改善が得られるようになった。99mTc製剤を用いた脳血流SPECTの場合、従来の検査時間での空間分解能を改善可能にする一方、従来の空間分解能であれば検査時間を著しく短縮できることが特長であり、緊急検査や小児検査へ応用が期待される。123I製剤を用いる脳血流SPECTの際、FANHRなどのコリメータを使用することで、従来よりも非常に高い空間分解能を得られることが明らかとなった。特にIofulupaneや、Iomazenilなどの123I製剤のイメージングにおいて、SPECT診断の精度向上をどのように目指していくのか、これから我々がやるべき仕事ではないかと考えている。
(本記事は、RadFan2016年2月号からの転載です)