ITEM2016 Breast Solution ~女性の健康を豊かなものに~

Satellite View~Canon Special Session:事例取材:Enrich Women‘s Health~女性の健康を豊かなものに~
2016.07.12

東芝ST

 2016年4月15~17日にわたって開催されたITEM2016において、東芝メディカルシステムズは乳房検査にフォーカスした「Enrich Woman’s Health!」と題し、女性の健康を意識した展示を行った。マンモグラフィから始まり、超音波検査、MRIと検診から精査への流れを意識、さらに検診車の撮影室を再現した空間も用意した。
 より快適で、高精度な検査の提供を目指し、患者さんはもとより、検査を実施する操作者のことを考えぬいた同社の最新機器を紹介していく。

東芝ST3
 
 

Mammography

 

国内営業本部X線営業部
吉村美紀氏

フォルム、使用感、スペーシング――すべてが“やさしい”、人気のマンモグラフィ装置
FPDデジタルマンモグラフィ装置 Pe・ru・ru

Pe・ru・ruは、スマートなフォルムが特徴的なデジタルマンモグラフィ装置。支柱の上下によって高さも変えられるため、天井の低い検診車に搭載する際にも邪魔にならず、斜め配置などで空間を最大限活用することができる。

 

Pe・ru・ru(ステレオバイオプシ対応タイプ)
※ホロジックジャパン社 吸引式組織生検用キット
Eviva breast biopsysystemを装着
計算し尽くされたフォルム

 ポジショニングによって患者さんの体が当たるような部位にはすべてカーブ加工をし、優しいフォルムを描く。圧迫板は圧を感じると下降する速度が低下するように設定されており、乳房の形を整えている手を慌てずに安全に抜くことができ、薄い乳房でも乳腺をより、広げながら圧迫できる。また、アームレストは患者さんが体を支えるために指をかけることはできる一方で、腕や大胸筋に力が入る原因となる、握りしめる動作をしにくい形状となっており、最適なMLOポジショニングが可能。

検査室をトータルプロデュース

 やさしさにこだわっているのは、装置本体だけではない。
 特に検診車への搭載においては、シェア90%以上という実績とそのノウハウから、受診者にとっても操作者にとっても、快適な検査環境を提供できるように、車内のインテリアを含めたトータルソリューションを提案していく。
 たとえば、壁や床のシールにより、患者さんの立ち位置や目線の向きを自然に誘導。操作卓は配置が自由で、新車はもとより、既存の検診車のレイアウトに合わせることもできる。また、撮影室内にX線防護壁を設け、ドアの開閉なく撮影ができる撮影室内操作方式のレイアウトも可能。さらに待合室も女性に人気なピンク色でまとめ、壁には鏡や髪をまとめるシュシュを置くスペースを作るなど、女性の声を活かして練り上げた提案となっている。ITEM2016での検診車モデルルームは、検診車の撮影室と同等の幅2.49×奥行き2.7mのスペースだったが、さまざまな心遣いが見られるためか、閉塞感を感じることはなかった。

フラットアームレスト
力を入れずに、リラックスして
体をあずけることができる。
小乳房用スロープ圧迫板
操作者の手が挟まりがちな部分がスロープになっており、操作者の手よりも薄い乳房でも
適切なポジショニングをすることができる。

マンモ検診車モデルルーム in ITEM2016
今回のITEM2016ではマンモ検診車のモデルルームが展示されていた。※画像をクリックすると拡大します。
東芝7
 
 

片側の乳房で4病変まで指定可能。ガイド編集モードボタンを押すことで、4つのUSボディマークが表示される。

エコースキャンガイド

 同社はITEM2016でマンモグラフィ装置の新しいオリジナルオプション機能「エコースキャンガイド」を発表。マンモグラフィでの病変位置を同機能で画像に入力指定すると、超音波検査で使用しているボディマーク上に病変の予側位置が表示される。超音波の検査者はPACSを介して、このボディマークを参照し、検査すべき位置や角度を確認しながら、検査を進めることができる。2015年末の乳癌検診学会でマンモグラフィと超音波の併用検査が推奨された今、同機能の需要は今後増大すると思われる。

Ultrasound

 

国内営業本部超音波営業部
加賀屋亜也子氏

乳腺内の微細な構造物を描出、早期発見で多くの患者さんを救う。
超音波診断装置 AplioTM Platinum Series

ハイエンド超音波診断装置「Aplio400」は、高画質を実現するため多彩なエンジンを搭載。Bモード画像での診断などはもちろん、超音波ガイド下生検においても高画質を提供、検診から精査まで幅広いシーンで使用が可能である。超音波事業50周年を迎えた同社の最新テクノロジーを紹介する。

高画質テクノロジー
Tissue Specific Optimization(TSO)

 音速などの生体特性のばらつきにより方位分解能が低下した際、ボタン1つで簡単に自動調整も可能。また、Precision Imaging ApliPureなどの組み合わせで視認性よく微細な画像も提供する。

東芝2-2

左側:TSO OFF         右側:TSO ON
Precision Imaging
 超音波画像を形成する信号をインテリジェント処理することにより、組織信号を強調し、生体内組織の境界などの構造視認性を高める。腫瘍部分などがより描出しやすくなることが期待される。
ApliPure
 空間コンパウンドと周波数コンパウンドの2つの効果を組合せた画像表示法で、細部までコントラスト分解能に優れたエコー画像を描出することができる。
 

Strain elastographyにおけるRGBサイン
データ提供 川崎医科大学 中島一毅先生
Strain elastography

 プローブを用いた用手的圧迫により、病変部位の硬さ(弾性)を映像化。速度の変化から、超音波ビーム方向上の歪みをリアルタイムに表示できる。また、従来よりも弱い圧迫での測定が可能となり、さらに再現性の高い検査をサポートする。嚢胞などで見られるRGBサインの観察により、良性疾患の鑑別診断も可能。検診で重要なポイントである「要精査となる患者さんを減らす」という点でも活躍する。

Shear wave(Aplio500オプション)

 高音圧バースト波(push pulse)を用いて組織を局所的に変位させ、発生したせん断波伝播速度を映像化し、
対象物の硬さを算出。プローブで用手的に圧迫するのではなく、push pulseを用いるため術者の技量に依存しない表示が可能。
 4種の表示モードを用意、東芝独自のせん断波伝播速度モードは信頼性の判定に役立つ。

データ提供 
りんくう総合医療センター 位藤俊一先生
SMI(Superb Micro-vascular Imaging)

 より微細で低流速な血流を捉える血流イメージング。独自のアルゴリズムによりモーションアーチファクトを除去し低流速血流の視認性を向上する。また、Bモードとは別にフォーカスを調整でき
るため、対象血流を感度よく捉えることができる。
 全体像の観察に向いているcSMI(color coded SMI) は、カラードプラモードと比較し、低流速血流が観察しやすいため、ユーザからの評価も高い。またモノクロ表示であるmSMIは血流感度が高く、Vascularityの有無の最終判断には欠かせない。

Smart 3D

 専用のプローブを使用せずともボタンを押すだけでvolume dataを作成し3次元画像を表示できる。Shear wave、SMIモードにおいても適用可能で、簡易的な立体像の観察をスピーディに実現する。

BEAM(Biopsy Enhanced Auto Mode)

 穿刺の際に針の視認性を向上させ、超音波ガイド下生検時に有効。Bモード画質の劣化を抑え針の映像化に最適な送受信を実施。

BEAM ON
BEAM OFF
MicroPure

 様々な構造物に埋もれて視認しにくい微小石灰化を乳腺に特化した特殊なフィルタを用いて視認性を向上させるモード。微小石灰化を描出しにくいという超音波検査の弱点をカバーした。Blue Layerをバックに病変を浮き上がらせて確認しやすくする。

Fly Thru(Aplio500オプション)

 内視鏡のように管腔内を表示できるモード。任意の方向から視点を移動させて観察可能。3D専用プローブを用いるため位置情報も正確であり、疾患の3次元的把握が容易となる。起動速度、操作性ともに大幅に向上した同社のみのモードで診断や治療をサポート。

DepthCueing OFF
DepthCueing ON

 

Viewer

 

国内営業本部INS営業部
中島奈月氏

シンプルに、より使いやすく進化したマンモビューア
Rapideye Saqura

マンモグラフィにおいて撮影はもちろん、読影も重要なポイントである。同社のマンモビューア「Rapideye Saqura」は、読影を快適な環境で行えるよう、使う人のことを考え、ユーザに寄り添う形でさまざまな工夫が施されている。ITEM2016では、5MBの高精細カラーモニタを使用して展示。カラーモニタであるが、モノクロと同等の輝度や色合いで表示ができる同モニタで、「Rapideye Saqura」の魅力をたっぷり紹介。

スルービュー機能でストレスなく読影

 1日に読影するマンモグラフィ画像は数多く、特に検診などでは検査数が膨大であり読影にも多大な時間を費やす。スルービュー機能では一連のレイアウトを表示し終えると、自動で次の患者さんの画像に切り替わる。リストに戻って次検査を選択する手間を省くことができ、ストレスの少ない読影を提供する。
 
Pe・ru・ruの検査マーカをビューアで表示

 画像上にマーカやコメントを挿入することで読影医に情報を伝達することができる機能。撮影者のみが知り得る情報を共有、または診療放射線技師同士でのダブルチェックのツールとしても使用できる。マンモグラフィ読影ビューア上で画像マーカの情報をON/OFFすることもできるため読影医が通常のルーチンを妨げることなく、情報を参照することも可能。

Pe・ru・ruの画像処理をビューアで再現
 
 処理済みの1枚の画像に4本の階調特性を付帯させ、ビューア側でこの階調に切り替え表示することで、データの欠落が少なくオリジナルデータに近い階調情報で観察できる。階調は、標準コントラストのものから、乳腺内を強調、石灰化を強調、乳腺外(脂肪部分)を強調することが可能。階調の切り替えはアイコンまたはキーボードで簡単に行える。

マウスだけで簡単操作
 
 マウス1つで「拡大」「階調」などの操作が直感的に行え、画面から目を離さずに操作ができる。また、画面上に左右の画像を並べて読影する際にも、片方の画像で関心領域を動かすと、もう一対の画像が自動で連動する。マンモグラフィ読影時に重要な左右を比較して読影する、という点でもユーザが使いやすいように工夫された点である。
 さらに、「リーディングプロトコル」を搭載し、ユーザーが登録した読影スタイルで、施設に合わせたレイアウト順番で画面の切り替えができる。表示切り替えは、マウスのホイールを回すだけでよいのでスムースな読影が可能。業務のスループット向上に貢献する。
 Pe・ru・ru DIGITAL画像の場合、ピクセル等倍まで拡大しても、モニタの表示領域に乳腺領域が収まるため、読影において乳腺全体を観察するという重要な点でもきめ細かいサポートがされている。

乳腺画像診断に特化した分かりやすいレポート画面
 
 レポート用紙に記入するような使い心地のシステム。ガイドライン準拠のチェック方式で簡単にレポートを作成できる。チェック方式であるため、統計も簡単に行え、検索時にも便利。また病変のシェーマ図はドラッグ&ドロップで挿入可能。病変シェーマを挿入すると、自動で形状などの情報がチェックされる設定もできる。
 さらに、施設に合わせたカスタマイズにも対応。項目の変更や、全体ページの色、読影の回数(二次読影のページも作る)などの設定が可能である。

 

Magnetic Resonanse

 

国内営業本部MRI営業部
千葉寿恵氏

独自の3大技術を搭載し、すべての女性に快適でスムーズな乳房MRI検査を
MRI用信号受信コイル ブレスト SPEEDER

同社はより良い乳房MRI検査のために、①上下左右に移動可能でMRIガイド下生検の際には簡便にコイルの取り外しが可能で、コイル上下方向にシフトできるコイル、ブレスト SPEEDER、②脂肪抑制を確実に行うEnhanced Fat Free、③シリコンを微細に描出するためのブレスト・インプラント用シーケンス PASTA-Siといった3つの独自技術を打ち出している。

 

ブレスト SPEEDER 全体像
ブレスト SPEEDER① エレメントシフト機能

 ブレスト SPEEDERは、コイル自体が上下左右に移働可能なエレメントシフト機能を持つ、MRI用信号受信コイル。すべての患者さんの体形に合わせ、小さめの乳房であればコイルを中央に寄せ、その後上にあげることで、コイルの中心に対象物が来るように患者さんに応じたポジショニングをすることができる。対象物との距離・位置が最適となることで、S/N比の高い、高精細な画質が得られ、ユーザからも高い評価を受けている。

横から目盛りをみながら指で簡単に動かすことができ、ポジションが定まったらロックする。患者さんの体型に合わせて調整できる。

 

コイルの取り外しが可能で、
コイル上下方向にシフトすることで、
スムーズに生検を行うことができる。
ブレスト SPEEDER② バイオプシー対応

 ブレスト SPEEDERはバイオプシー対応コイルとなっていて、エレメントシフト機能は、MRIガイド下生検の際にも大変役立つ。穿刺部位が大胸筋に近く従来であればコイルが動かず穿刺しにくい部位に対しても、ブレスト SPEEDERであれば、容易にコイルを上に動かすことができ、加えて取り外すことも可能なため、大胸筋に近い部位でも針を容易に穿刺することができる。
 MRIガイド下生検は現在保険適応外であるが、MRIは感度が高いことが一番の特長であり、一例として、超音波での検査と生検で非浸潤性乳管癌が見つかり、温存手術が検討されていた症例に対して、MRI検査を実施、新たに見つかった症例に対し、再度超音波検査を実施するも確認できず、MRIガイド下生検を行ったところ浸潤性乳管癌が新たに確定し全摘出に切り替わったという症例もある。このようにより精度の高い診断のためにも、今後乳房MRIの利用が増加するのではないかと考えられる。

 

Enhanced Fat Free法とCHESS法の比較
脂肪抑制法 Enhanced Fat Free

 従来、乳房MRIは特殊な形状から脂肪抑制が難しい部位の1つとされてきた。検査は造影剤を使用するため、脂肪抑制不良の場合でも再撮像は難しく、操作者の経験に左右されずに、確実に脂肪抑制された画像を得ることが課題となっていた。
 同社が特許を取得したEnhanced Fat Freeでは、従来の脂肪抑制法では脂肪選択励起パルスを1回印加するところ、脂肪選択励起パルスを2回印加することで、脂肪抑制ムラをおさえ、両側均一で高画質な画像を得ることができる。なおかつ、非常に短いパルスを印加していることで、撮像時間はSPAIR法に比べて圧倒的に短く済み、従来のCHESS法とほぼ同様のルーチンワーク内で使用することができる。造影検査Dynamicで求められる時間分解能と空間分解能を両立していることが同法の強みである。

 

PASTA-Si
ブレスト・インプラント用シーケンス PASTA-Si

 2013年に乳癌切除後の乳房再建手術でのインプラントが保険適応となり、現在インプラントを用いる施設も増えつつある。シリコンインプラントは体内に漏出してはならないものであるため、定期的に漏出を評価する必要があるが、シリコンはグミ状であるため形が崩れにくく自身では破裂や漏れの自覚がしにくい。検査の基本は超音波検査であり、超音波で評価しづらいものは、MRIで評価することとなるが、インプラントのイメージングは大変難しいものとされていた。
 同社のMRI搭載シーケンスPASTA-Siは、自動でシリコンを鑑別し、高精細に描出する。このシーケンスを用いることでシリコンの漏出ならびに生理食塩水かシリコンかであるかの識別が簡便に行える。