東芝メディカルシステムズ社製 回診用X線装置
Mobirex にクローズアップ!! ~済生会熊本病院~

Satellite View~Canon Special Session:X線、再発見。X線装置トリセツ集
2016.12.27
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院
中央放射線部技師長
和田博文氏

●現場に潜入!!使って実感 Mobirexの有用性
東芝メディカルシステムズ社製
回診用X線装置
Mobirexにクローズアップ!!
~済生会熊本病院~

地域に密着した高度急性期病院として全国的に知られる済生会熊本病院は熊本地震においても中心的役割を担った。震災時でも活躍した東芝メディカルシステムズ社製回診用X線装置「Mobirex」の高い汎用性と動作性にスポットを当て、同病院中央放射線部技師長、和田博文氏に話を伺った。

 

おすすめポイント
●FPDシステムの搭載 ●コンパクト性 ●ワイヤレスハンドスイッチ

FPDシステムがぴったり収まる

社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院
所在地 熊本県熊本市南区近見5丁目3番1号
総病床数 400床(うち162床個室)
救命救急センター42床(EICU4床、EHCU18床、
救命救急病棟20床)、集中治療室(ICU)16床、
ハイケアユニット12床、7対1一般病棟330床
URL:http://www.sk-kumamoto.jp/
▲他社製品FPDシステムも搭載可能
 済生会熊本病院は「救急医療」「高度医療」「地域医療と予防医学」「医療人の育成」という方針のもと、特に救急医療に力を注ぐ急性期病院として全国的に知られている。診療放射線技師は併設されている予防医療センターも含め46名が勤務されており、年齢層は30代が最も多く、女性技師は14名。2015年に回診用X線装置3台を一斉に東芝メディカルシステムズ社製「Mobirex」へ更新した際のことを和田氏は語る。「オペ室専用の回診用X線装置は移動が少ないため、院内で一番古いものを配置するようにしており、オペ室の装置は度々不調もありました。更新した直後は看護師さんからもいわれましたよ。『新車が来ましたね』って」。
選定のポイントとして「FPDシステムが収納できるかが大前提」と和田氏は説明した。今回導入した「Mobirex」では装置サイズ自体がコンパクトでありながらもPCや備品の収納スペースが大きいため「今では撮影システムに加えて、撮影後に装置を清潔に保つための清拭シートなども、載せるスペースが確保されているので置いています」といい「始業点検時だけでなく使用する度に装置全体を清掃しています」と清潔に保つための消毒用品などを搭載できることも評価されていたポイントであった。
同病院は廊下も広く回診用X線装置も十分に走行可能であるが、スタッフルームに向かう通路に狭い箇所があり、通路を経由して装置は保管されている。毎日通る狭い通路もコンパクトな同装置であれば通り抜けは容易。また、パスコードによる管理について和田氏は「当院では救急撮影が多いのですが、鍵で管理していると誰かが持っていたりして鍵が見つからず急な出動のときに困ることがありました。パスコード管理であればパスワードを知っていれば誰でもすぐに動かせるので救急時に助かります」と話された。
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「1日数km」の負担を解消するパワフルかつ省エネルギーな仕組み
ポータブル撮影は病棟で一日約50件。病棟では狭い部屋もあり小回りがきく「Mobirex」の操作性やコンパクトな横幅などが好評である。和田氏によると「スムーズに動き出してスムーズに止まることが大事」だという。また、X線可動絞り部にある微速走行スイッチは管球側から本体を微調整させることができるため便利で、よく使用していると語る。
一方で「長距離の走行に対する工夫」にも目を向けられていた。回診用X線装置は階を移動しながら撮影するため一日あたりの走行距離も多い。「当院の病棟は6階建てで廊下の端から端までが約150mで、一日に数kmは走行します」と同氏は述べ、走行時の負担を軽減する機構も選定では重要視されていた。
「Mobirex」が持つパワーアシスト機能は使用者の操作する力に応じて走行を制御する電動アシスト自転車のような機能で、小回りの効く制御と動作アシストが特徴。さらに「同装置は支柱が細いため運転していても視野が確保できます。高速に運転できるとその分衝突のリスクが高く、危険を伴うので視野の広さは大切です」と説明した。
続けて「特によい点はバッテリーの持ちがすごくよくなったことです」といい、「以前の装置は駆動も撮影も同じバッテリーで持ちが悪く、病棟で動かなくなるという苦い経験もしました。午前中に撮影で病室を回ってきたら休ませなければいけませんでしたが、今では一日中使用しても大丈夫です」と同氏は述べた。さらに、照射野ランプにハロゲンランプではなくLEDが用いられていることもバッテリーの持続性に関わっている。「ハロゲンランプはだんだん照度が下がり見づらくなってしまっていましたが、LEDに変わりすごく明るくなりました」と照射野の視認性についても評価されている。LEDは青色に近い発光を採用されており、太陽光が差し込む病室内でも照射野の辺縁を認識できるように設計されている。
同病院ではオペ室撮影の機会も多く整形外科領域をはじめ、様々な部位の撮影に対応している。そのためX線の最大出力も重要視されている。「回診用X線装置による撮影であっても通常のX線撮影装置と同じような撮影ができないと困るので」と語る和田氏。「重症の患者さんなど、一般撮影室まで降ろすとリスクがある方もいるので、ポータブル撮影でも胸部・腹部や腰椎・股関節など様々な部位に対応しています。十分な出力がなければ対応できません」という。
1人での撮影時などに便利な「ワイヤレスハンドスイッチ」
「Mobirex」はワイヤレスハンドスイッチによるX線照射が可能で、和田氏は「夜勤など1人で撮影する際に活躍する」と語られる。「撮影時に動いてしまう患者さんを撮影するとき体を抑えることがありますが、このときハンドスイッチを引き寄せて使用するので作業が煩雑になります。しかし、ワイヤレスハンドスイッチは室内のどこからでもリモコン操作が効くので、患者さんのそばにいても手元のリモコンで撮影できます。さらに、極力スタッフの被ばくを抑えたいので、遠隔操作に加えて防護板も併用しています」と、ワイヤレスハンドスイッチの様々なメリットを伺うことができた。リモコンは赤外線でコントロールされており、装置本体へ向けないと曝射できないような工夫で誤作動を防止している。「リモコンは様々なシチュエーションであっても1人で撮影できるというのが一番いいですね。ハンドスイッチのケーブルは伸ばすと傷むことが多く、よく断線し、結構な頻度で交換していたのでワイヤレスハンドスイッチは本当に有用です」と説明した。

災害でも中心的役割を果たした「Mobirex」
同病院は熊本地震において多数の患者を処置・診療を実施した地域の災害救急の中核病院として活躍。停電が生じた院内で活躍した「Mobirex」は、2015年10月に3台同時に導入された。「地震は9時半と深夜1時半に発生したのですが、ショッピングモールなどが閉まっていたおかげか想定よりも外傷患者は少なかったです」と、当時を振り返る和田氏は院内の状況をこう語った。「震災のときは停電したので非常用電源でFPDシステムを立ち上げました。X線撮影装置は稼働できなかったので撮影は全てポータブル。新しい回診用X線装置が3台あったのでなんとか復旧時まで繋げられるだろうと思いました。回診用X線装置はもともと動きまわれる装置なので、ボディも強固で振動にも強いだろうと考えていましたが、その後も故障せず今も変わらず使っています」。