東芝メディカルシステムズ社製 回診用X線装置
Mobirex のイマどきスタイル ~東海大学医学部付属八王子病院~

Satellite View~Canon Special Session:X線、再発見。X線装置トリセツ集
2016.12.27
東海大学医学部付属八王子病院
診療技術部放射線技術科
由地良太郎氏

●現場に潜入!!使って実感 Mobirexの有用性
東芝メディカルシステムズ社製
回診用X線装置
Mobirexのイマどきスタイル
~東海大学医学部付属八王子病院~

東海大学医学部付属八王子病院では、東芝メディカルシステムズ社製回診用X線装置「Mobirex」を4台導入し、様々な現場で使用している。今年の3月に導入し、半年程経過した現在、同病院の由地良太郎氏に同製品の選定理由や、活用の実際などを伺った。

 

おすすめポイント
●後方ハンドル ●収納スペース ●管球の可動域

導入までの経緯

東海大学医学部付属八王子病院
所在地 東京都八王子市石川町1838
総病床数 500床(一般:459床、ICU/CCU
16床、ハイケアユニット:25床)
URL:http://www.hachioji-hosp.tokai.ac.jp/
 東海大学医学部付属八王子病院は東京都八王子市を中心とした南多摩地域の住民の医療を担うことを目的として設立された、33の診療科を有する大学病院。「断らない救急医療」として24時間、365日対応の二次救急体制を整えられており、救急医療にも力を入れられていることから、同病院での回診用X線装置の使用頻度は高いことが窺える。しかし2002年に購入した回診用X線装置が経年による動作不良で使用できなくなったため、今回東芝メディカルシステムズ社製回診用X線装置「Mobirex」へと更新した。由地氏によると選定には「FPDシステムが一体でなく、アドオンとして利用できるもの」さらに「どのような安全機構や便利機能があるか」に着目されたという。
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便利な後方ハンドルと収納スペース
 同病院では病棟・手術室・ICU/HCU・救急にそれぞれ「Mobirex」が1台ずつ配備されている。実際に回診用X線装置を使用する病棟やICUのベッドサイドを想定すると、装置の移動可能範囲は極めて狭いため、装置自体の構造がコンパクトであること、細やかな操作が可能であることなどが求められるが、同製品はベッドサイドなどの狭い環境でもスセットドーム構造で望む方向に14cmほど移動させることができる。
 由地氏によると同病院では36人の診療放射線技師が勤務されており、そのうち11名が女性技師である。ポータブル撮影は1日あたり40~50件程度であり、前述のような高い操作性と移動負荷の低さが業務全体の負荷の改善に大きく貢献しているとされる。「Mobirex」は後輪二軸独立駆動により高い駆動性を有しており、軽い力で装置をスムーズに動作させることが可能。支柱の高さも十分あり、病棟やICU/HCUなどのベッドが高い時や、体格の大きい患者の撮影の際に撮影距離をとる必要がある場合などでも、対応可能である。また、支柱が高く管球を高く上げられる一方で、低く下げられることも好評を得ている。由地氏は「当院では、病棟における高齢の方に対する撮影の再現性を保つ時などにデクビタス撮影(側臥位撮影)を実施しますが、その際に管球が下までしっかり下がるのは魅力ですね」と語る。
 装置本体には選定のポイントであったノートPCが搭載できるスペースの他に、その他の備品を搭載できるスペースもあり、環境清拭用洗浄剤などの備品も収納できる。この点も高く評価されており「感染委員会等でも回診用X線装置の移動が院内感染の原因と指摘されることもあり、当院では撮影毎に装置やFPDを清潔に保っており、院内感染症の拡大防止に努めています」と述べ、同装置にしてから環境清拭用洗浄剤のシートが取り出しやすいため、撮影後のFPDの消毒などが容易になり、スタッフの意識もさらに高まったという。さらに、X線管後方部に配置されている後方ハンドルも高評価である。後方ハンドルにはフリースイッチが装備されており、支柱側からのあらゆる操作が容易となる。「装置をセットして患者さん側へ回った後に、管球が操作パネル側を向いていて手が届かないということが皆さん割とあると思うんです」と同氏は説明し、撮影前に、ベッドサイドに立っていても操作パネル側を向いている管球を自分の手元に楽に引き寄せることができる後方ハンドルは全員使用しており、ワークフロー向上の一助となっているようだ。その他、装置の電源のON/OFFはパスコード式になっており使用側が認識していれば誰でも使用可能で鍵の装着や管理が不要である。
ユーザだけでなく患者さんにもやさしい検査を
 X線可動絞り部に配置された微速走行スイッチでは、装置を低速で前後させることが可能になっている。これは回診用X線装置をベッドサイドに寄せた際、管球側から装置位置の微調整を施しやすい設計・操作性になっており、多用される機能の一つである。このスイッチにより、患者さん側に立った後に「もう少し装置を近づけたい」という時でも装置ハンドル側へ戻らずとも装置の移動ができる。由地氏は「回診用X線装置が活躍する病棟のような現場では臥位で撮影することが多いため、ベッドと患者の間に硬いFPDを配置すると、患者が痛みを訴えることがあるんですよね。なので、撮影はなるべく短時間で済ませられることが好ましいです」と語り「管球側で装置の動作を制御可能なこの機能は、撮影時間の短縮に大きな一助をもたらしています」と日常診療での課題が解決されていることを評価されていた。さらに照射野ランプは従来のハロゲンランプからLED(発光ダイオード)に更新されており、瞬時に100%の明るさで点灯する。「ハロゲンランプの時は照射野ボタンを押してから『ぼうっ』という感じでじわりと光がつくイメージでしたが、LEDになってからはボタンを押したら『シュッ』とすぐつきます」と同氏は表現した。
 旧装置では、走行モードと曝射モードと2種あったため走行モード時から充電を経てから撮影しなければいけなかった。この点に関して由地氏は「救急の現場では、例えば心臓マッサージ中の撮影など迅速な撮影が求められますが、同装置にしてから充電による待機によって処置を滞らせることはなく、使用しやすいです」と語った。また、「Mobirex」の高出力はICU/HCUなど呼吸抑止が困難な患者さんを撮影する際に活躍する。由地氏は「短いタイマで撮影できることで、体動による画質への影響を最小限に抑えることが可能です」と話している。
無線LANとグリッドレスで業務効率化
 「FPDシステムが装置と一体ではない」点は同装置の選定のポイントでもあったように、同病院ではFPDシステムを導入している。ポータブル撮影の際、院内で無線LAN環境を整えておけば、オーダーの受診・撮影画像の送信も迅速である。同病院では移動の際に必ず通過するエレベータ付近に専用のWi-Fiスポットを設けており、業務のスループット向上を実現している。FPDは装置の待機場所に保管し、グリッドレスシステムを採用しているためグリッドの持ち運びも不要。破損の心配もない。
 また同病院は災害拠点病院であることから、由地氏は「災害時などにおいては胸部、腹部問わず全身のあらゆる部位の撮影が想定されます。このため支柱の高さやそれによる可動域、少ないエネルギーで動作する装置の駆動性や多様性、汎用性が高い装置は必ず重要視されると思います」と災害時の強力な診断モダリティとして活躍することに期待を込められていた。