キヤノンメディカルシステムズは3月15日(木)、福岡国際会議場(福岡県福岡市)にて開かれたSTROKE2018において、ランチョンセミナー「画像診断で創る脳卒中診断のいまと未来地図」を開催した。講演では宮本 亨氏(京都大学大学院医学研究科脳神経外科)が座長を務め、検査の時間だけでなく質にも重きを置いた脳卒中診断の最新の知見が語られた。
講演2
「脳卒中センターにおける急性期脳梗塞の診断から治療~最新のモダリティと解析の活用~」
1. Time Based(時間重視)だけでなくTissue Based(組織重視)を
続いて河野浩之氏(杏林大学医学部脳卒中医学)が、脳卒中の診断における“Time isBrain(時は脳なり)”という考え方に対し、デバイスや治療の進歩を踏まえ「脳組織の評価も重要である」と話した。
脳卒中は診断から治療開始までの時間が非常に重要とされ、“Time is Brain(時は脳なり)”ともいわれる。氏はそれを前提とした上でDALY(Disability Adjusted Life Year、疾病や障害のために失われた健康的な生活の年数)という基準を示した。脳卒中では救済できたペナンブラが多いほどDALYが少ない(=健康な予後を送れる)とするデータがあり、ここにおいて治療前の虚血コアの体積やどれだけのペナンブラを救えたかといった画像情報を因子として見ると、最終的には時間を因子とするDALYの有意差はなくなる。
氏はこれより、脳卒中の診断は時間の速さも大切だが、脳組織を十分に評価することも同じく重要であると述べ、主にCT灌流画像による厳格な患者選択とデバイスの進化がよい経過をもたらしているとした。
氏が「日本では主流ではないが、この流れに乗るかどうかが大きな分岐点となるだろう」と語るCT灌流画像。杏林大学脳卒中センターでは既に単純CTと灌流CT、血管撮影をまとめて行い、検査時間を20分短縮する新たなプロトコールを構想中だという。氏は発症後6時間以上経過したLate Time Windowと呼ばれる患者に対する治療の予後が良好となっているデータを挙げ、その治療においてもCT灌流画像が用いられており、CT灌流画像が患者の治療適応拡大の中核を担っていると語った。また今後期待するモダリティとしてUltra High-Resolution CTを紹介、これによる病態把握や病型診断への応用も可能だと語った。
2. 画像解析方法の改善が時間短縮にも繋がる
氏は画像の撮影時間が短くなれば治療開始までの時間が早くなるという点に疑問を呈し、検査終了後の過程に時間がかかっていたというデータを提示。原因の1つとして「画像の解釈や治療の決定に手間取っているのではないか」と分析し、病変が一目でわかるなど経験に依存しない画像判定方法や、並行して他の作業を進められる全自動の解析方法が必要になると提言した。
また灌流CTによって画像の定量化が可能となった今では、見た目での判断よりもAIやDeep Learningでの解析が活きてくるとした。氏はAIの技術に関して教師学習用データが本当に正しいのか、メカニズムが不明なままに使い問題が発生した場合は誰が責任を負うのかなど、慎重な考えを示しつつも、新しい技術と意欲的に向き合う積極的な姿勢を見せた。